出版社内容情報
言葉がこころに届くとは? 生きるための言葉は、どのように立ち上がるのか。事故・災害等の社会問題や医療問題に永年対峙しつづける著者による、「いのちの言葉」の省察と探究。待望の長編評論。
内容説明
いのちの息づかいを映す言葉は、どこから生まれてくるのか。沈思と省察の記録。
目次
熟し柿が落ちる時
言葉の継承千年
『イリアス』『方丈記』の現在
悲しき時のみ詩を給う神
震災後、共有する言語空間
人みな異邦人となりて
素朴な言葉の奥行き
浮かび上がる「心の闇」
「からだ」の記憶、あふれる涙
生身と心の折り合い
物語を生きる人間
極限の状況からの啓示
著者等紹介
柳田邦男[ヤナギダクニオ]
1936年、栃木県鹿沼市生まれ。作家。社会問題・医療問題などのノンフィクション作品や評論活動を展開、近年は心や言葉の問題、また絵本についても積極的に取り組む。『マッハの恐怖』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞(1972)、『犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日』などで第43回菊池寛賞(1995)など、受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さと
43
言葉への旅。生と死をめぐる人生哲学の旅と称して言葉のルポタージュ。身体と心は切り離せない関係にあるよだ。との導きに始まる東日本大震災でわが子を失った母の叫びが心を打った。言葉では表現できない辛さはからだを通して叫び続ける。言葉は私たちのからだに内包されその一つ一つに物語を含む。病院のベッドで過ごす母の言葉にイラついたりすることもあったが、その言葉に内包された物語にも耳を傾けてみよう。 2014/12/30
ぱせり
11
別れは、ただ別れていくことではないのだな、と感じた。感性を研ぎ澄ませ、言葉に敏感になり、言葉の奥に分け入ることができるなら。体まで引き裂かれるほどの苦しみ、悲しみを体験しながら、それが、かけがえのない時間=ドラマティックな時間と思えるようになるのだろうか。それは、死と生を超えた(心と体とをつなぐ)「たましい」が顕わになる時なのだろうか。 2014/03/06
あかつき号
7
初著者。ことば。こころ。からだ。あたま。いのち。じんせい。本を読むことも、書くことも、聞くことも、時に無性に追い求めていくのは、ことばに魂を売っているからなのか、と思っていたが、自分がことばの主になることは不可能ではなく、自らの意思で可能なのだとおもった。奴隷でいながら、私はことばを愛していたのかと自問している。2015/02/07
いちゃん
4
「人間だけが幽霊の話ができる」こういう事をおしえる教育が、必要な気がします。2013/08/09
しゃが
3
ひとは苦境のとき、何を思い、どんな言葉が浮かぶのか。向かい合う人は何を聴き、どんな言葉があるのかを省みさせてくれた一冊。柳田さんが出会った人、本を通して、生と死、それに向かい合う関係を語る。生きていくうえで言葉や物語は簡単には言いたくないが大切とわかり、そして大きな力を与えてくれることも。その中には、工藤直子・『ゴトーを待ちながら』・鷲田清一と私もよく読む本だが、視点の違いが興味深かった。柳田さんも姜さんも息子さんを亡くされ、過ぎた時間の違いはあるが、柳田さんは深いたましいで息子さんと向かい合っている。 2013/07/03