出版社内容情報
２つの月が浮かぶ世界で、危険な“霧”の大河に架橋しようとする人々の苦闘と絆を描きヒューゴー賞・ネビュラ賞を受賞した表題作を始め、全１１編を厳選収録した短編集。
内容説明
不思議な別れと出会い。危険な“霧”の大河に初めて橋を架けようとする人々の苦闘と絆―表題作を始め数々の賞に輝く１１編を厳選。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞受賞作収録。
著者等紹介
ジョンスン，キジ［ジョンスン，キジ］ ［Ｊｏｈｎｓｏｎ，Ｋｉｊ］
１９６０年米国アイオワ州生まれ。８８年に作家デビュー。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞、スタージョン記念賞など多数の賞に輝く。小説・コミックの編集者や、カンザス大学ＳＦ研究センターの創作講座講師などの経験がある。現在はスタージョン記念賞の選考委員を務めている
三角和代［ミスミカズヨ］
１９６５年福岡県生まれ。西南学院大学文学部外国語学科卒。英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
391
表題作と10の短篇・掌編からなる。キジ・ジョンスンの真骨頂はやはり表題作にあるだろう。たしかに、これは様々な意味において「喪失」の物語である。霧の河に橋を架けるという建設的な営為が主軸を成しているにもかかわらずである。何かが生まれることは、何かが消えていくことでもある。また、それ以外にも物語の中で失われていくものは多い。それはいくつかの命であり、また人と人との紐帯であったりもする。ル・グインに似ているとも言われるようだが、ゲドの晩年とは幾分かの相通性が感じられないではない。そこに共通するのは「諦念」か。2019/04/11
KAZOO
141
この読メさんの感想を見て読んでみたのですが私には非常に感覚の合う物語でした。SFというよりも幻想小説に近いような感じがしました。表題作は約半分を占める中編で読みごたえがありました。工学的な感じで完成させる経緯が楽しめます。ル・グインやタニス・リーほどには幻想っぽさはないにしても似ている気がします。ほかの短編もかなり楽しめました。2016/01/20
藤月はな（灯れ松明の火）
66
幻想的な世界が舞台なんだろうなと思い込んでいたら「マトリックス」などの現在を示す用語に思わず、「現在なのか！」と叫びそうになりました。「２６モンキーズ、あるいは時の裂け目」と「シュレディンガーの娼館（キャットハウス）」、表題作が好きです。「スパー」のコミュニケーションが取れない中の異種間でのセックスがどんどん、感情や自己認識を失わせるが、生存本能は残っていたというラストに「閉鎖空間内で感覚を遮断された状況の思考実験」への亜種的解答ではないかと思わずにいられません。「噛み付き猫」は家庭環境が似ていたので共感2014/10/10
星落秋風五丈原
58
「スパー」すごい。エイリアンとのセックスだ。「陳亭、死者の国」は中国版オルフェウス。表紙絵になっている表題作は何とも幻想的。2016/08/24
りー
40
創元SFのレーベルで出ているもののSFと呼べるものは半分にも満たない、奇想小説といった趣きの短編集。短いセンテンスで淡々とした語り口でありながら的確にこちらの心を揺さぶる物語作りの上手さ。書き出しから読者の心を掴む巧みさ。大器を感じさせるというよりも優等生的な、何を書いてもそつなく書けてしまいそうな優秀さを感じる作家だった。特に表題を飾るだけあって『霧に橋を架ける』は心地よいペーソスに満ちた良作でお気に入り。お気に入りすぎて昼寝時に夢にまで出てきたくらいだ。2014/06/19
