内容説明
本書は、ユングが多年にわたる経験から得た所見をできるだけ平易に、なんの予備知識も持たない読者に解き明かそうと努めたものであって、ペルソナ、アニマ、アニムス、自己といったユング心理学の基礎概念について、これほど丹念な説明を加えた自著は他にほとんどないといってよい。
目次
第1部 意識に対する無意識の作用
第2部 個性化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya
25
フロイト、アドラーにも触れられていて、心理学入門書としていい本だと思う。「意識」と「無意識」その中でも個人的・集合的という無意識のなかで分かれているのがユングの理論。自己と自我、主体と客体などやや哲学的になるが言葉を整理していくと初心者にも理解出来る内容でした。無意識の中の区分こそ最も難しい技術であり、他者を予感し尊敬することが大切と纏められている。本書に登場する心理状態をより深く知りたい人向けに幾つかの本も紹介されていて、本格的な哲学書の前に読むのをお勧めします。2015/12/20
Uncle.Tom
20
東洋思想と極めて親和性が高いと言われるユング心理学。無意識という普段意識に上らない領域であるが上に、なかなか理解するのが難しい部分も多いですね。自分の勉強不足感を感じます。意識と無意識はそれぞれ日常的に相互補完するかたちで成り立っているようですね。自分自身の行動に関しては自らの意思で制御してるという感覚は大半の人が抱いてると思います。しかし、なかなか把握しづらい無意識の影響を少なからず受けて日常の行動が決定している。ユングの集合的無意識という概念はなかなか掘り下げがいのあるものだと感じます。2019/10/06
roughfractus02
12
心は意識と無意識が統合された自己(Selbst)であり、両者は「補償」関係にある。また、無意識は個人的/集合的の2種があり、集合的無意識もペルソナ(社会的役割)と元型(普遍的タイプ)がある。意識が自我(Ich)に無意識を固定すると無意識は「補償」を作動する。が、過度の補償は自我肥大(ノイローゼ、誇大妄想)を起こすと著者は言う。本書は、男性/女性のペルソナに固執する自我へのアニマ/アニムスの元型の「補償」が、神話的妄想を起こすマナ人格(預言者等)を作ることを臨床的に語り、自己を均衡化する個性化の療法を示す。2021/05/13
ぶくし
12
「自分」を見つけるためにこの本は役に立つように思える。まず、自分は「人に認められたい」という願望を明確に抱いていた。しかしそれは私の自我からでるものではなく、優性形質との同一化を望んでいるだけかもしれないという発見ができた。この本は一度読んでみただけでも、自分の生き方を変える(しかもよい方向に向かっていると感じる)パワーを持った本である。ただしこの本を信じ依存することは、それもたユングのいう英雄への依存、そして自己肥大に向かうこととなり、この本がかならず自分を導く本だと考えてはいけないとも思える。2014/12/14
でんすけ
11
リビドーが性的な欲求からのみに根ざしたものではないと、フロイトの明確な部分否定からスタートしている。このあたり、フロイトを読んでいても疑問に感じた所だった。ペルソナなどの用語はなんとなくわかるとしても、個性化の過程については理解が追いついていない。無意識を全肯定するのもだめ、全否定するのもだめ、ただ浮かび上がってきたイメージを読み解くことで、自我に取り込み、拡大してペルソナを纏うことで社会との繋がりを持つ?後半部分は実践から得た教訓のような、現代哲学との接続のような、曖昧な感覚。理解には時間がかかりそう。2017/01/15