レクチャー第一次世界大戦を考える
「クラシック音楽」はいつ終わったのか?―音楽史における第一次世界大戦の前後

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  • サイズ B6判/ページ数 144p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784409511107
  • NDC分類 762.3
  • Cコード C1320

内容説明

芸術表現につきつけられたアポリア。落日しつつある西洋社会の閉塞感のなかに胚胎し、続く大戦経験がもたらした表現とは?前衛芸術、録音メディアの登場、ジャズの熱狂、音楽の国有化…音楽史の切断面への試論。

目次

第1章 戦争の「前」と「後」―音楽史の亀裂としての第一次世界大戦(アヴァンギャルドの誕生;アメリカ・ポピュラー音楽の勃興;録音音楽の時代;音楽における国際主義;国有化される音楽?)
第2章 モダニズムからアヴァンギャルドへ―大戦勃発前に起きたこと(戦争の予感;戦場となる演奏会場;シェーンベルクと不協和音の解放;ストラヴィンスキーとリズムの解放;未来派とノイズの解放)
第3章 熱狂・無関心・沈潜―戦中の音楽状況(「精神の戦い」としての第一次世界大戦;総動員体制の中の音楽?;世代交代期としての第一次世界大戦;出兵した作曲家たち;亡命者たちの音楽;内なる戦争体験)
第4章 社会の中の音楽―パウル・ベッカー『ドイツの音楽生活』をめぐって(音楽は社会が作る;音楽における資本主義への批判;音楽社会学的テーゼの反転―ベッカーからアドルノへ;最後の啓蒙主義者としてのベッカー?;音楽を通した国際的融和の希求;戦争がもたらしたもの)
第5章 音楽史における第一次世界大戦とは何だったか―戦間期における回顧から(一九二〇年代の音楽と新古典主義;ハインリッヒ・ベッセラー「音楽聴取の根本問題」と戦前音楽文化への批判;ベッサーラーと「行動する音楽」の美学;ベッセラーの思想とユーゲント運動)

著者等紹介

岡田暁生[オカダアケオ]
1960年生まれ。大阪大学大学院博士課程退学。現在、京都大学人文科学研究所准教授。文学博士。専攻は音楽学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

左手爆弾

8
筆者のあとがきの書き出しがすべてを物語っている。「1914年から1918年にかけて第一次世界大戦があったことを知らずに、西洋音楽史の年表を眺めるとする。それでも多くの人がここに、大きな歴史の断想が走っていることに気づくに違いない」。戦前はまさに古典的な意味での「クラシック」が、戦中には寡作になり、やがて戦後になると「アヴァンギャルド」「現代音楽」へと変貌してしまう。それをもたらしたのはブルジョア教養階級の没落と、音楽の社会化・政治化だという点に焦点を当てて分析。短いが読みやすく大変勉強になる。2017/12/02

KOBAYASHI Masahide

3
「1920年代におけるこうしたアンチ・ワグネリズムは、しばしばネオ・バロック音楽という形をとる。(...)ワーグナーと違って、ベートーヴェンが<<第九>>で歌い上げたのは『全人類の』友愛であって、前者の楽劇<<ニュルンベルクの名歌手>>に見られるような国家主義的な要素はまだない。だがワーグナーの音楽が惹き起こす、全聴衆を陶酔の渦に巻き込むような力のルーツがベートーヴェンにあったことは、否定できない(ワーグナー自身、自らの創作のルーツは<<第九>>にあると考えていた)。」pp.122-1232016/08/25

くるくる。

1
第一次世界大戦を予見するようなアヴァンギャルドの登場。東欧社交界の崩壊によるアメリカポップミュージックの台頭。期を同じくしてレコードの登場。人類の共同感を高める第九。国家主義的なワーグナー。教養市民の特権となったブラームス。戦時下において、具体的に役に立つことを求められる音楽。特権的な音楽から市民的な音楽へと移り、音楽への参加が叫ばれる。しかし、ワグネリズムを忌避したにもかかわらず、皮肉にも参加する音楽的な思想はナチスとも共鳴していく。2020/05/12

hika

1
音楽に没入し陶酔することがどこにいこうとしているのかと。現在の音楽(フェス、アイドルも含めて)思うことである。2015/10/09

たくのみ

1
既存の体制にたいする批判が、行き過ぎた破壊にすすむ。音楽の分野でも大戦という時代の転換点で、「無調音楽」「不協和音の開放」「騒音音楽」などの新潮流が発生。また、音楽家たちが愛国主義のもと翻弄され、時に戦争の旗ふりをし、従軍し傷ついたり、音楽性が迷走したりする、こんなこともあったのか!と驚愕させられました。2012/12/09

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