内容説明
「心理学と宗教」「ヨブへの答え」を初め、三位一体の意味、ミサの意義、心理学と牧会の関係などを論じたユングの宗教論六篇収録。
目次
心理学と宗教
三位一体の教義にたいする心理学的解釈の試み(キリスト教以前において三位一体の観念に対応するもの;父と子と聖霊;信経;三つの位格の心理学的解明;第4のものの問題)
ミサにおける転換象徴(導入;転換儀礼の個々の部分;転換の神秘に対応するもの;ミサの心理学)
心理療法と牧会の関係について
精神分析と牧会
ヨブへの答え
感想・レビュー
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roughfractus02
7
覚知不能な無意識が個人から集団に移る時、心理は宗教に近づく。著者はこの心理をグノーシスの神が隠れた世界構造と見立て、「神の恩寵」を無意識のそれとして扱う。感覚認知する存在を実在と錯覚する意識に真の実在としての無意識の恩寵をもたらすのは、人知を超えた実在に触れる体験だという。宗教学者ルドルフ・オットーの示した「ヌーメン性」(神霊性)は、死や誕生に直面する誰もが体験するからだ。この真の実在に触れるための技法を宗教儀式と捉える著者は、その手順を指導する「牧会」と患者を無意識へ誘う分析心理学の役割を対照していく。2021/06/07