内容説明
企業誘致に成功し、タワーマンションも林立して人口が急増する神奈川県多摩川市湧新地区で、小谷桜子は古くから花屋を営んでいる。十七歳の娘・菫子が市民の結束を目的に企画されたミュージカルの演者に選ばれた。新旧の住民が入り交じり盛り上がっていく街。だが、水を差すかのように若い女性が立て続けに殺される。それぞれの遺体近くには異なる花びらが一片だけ、なぜか残されていた。犯人が捕まらず、謎も不明なまま、街に不穏な空気が満ちるなか、今度は菫子が何者かに誘拐されてしまう。格差、母子家庭、LGBT、子どもの貧困、タワマン、危険ドラッグ…。ニッポンの“今”を鋭く照らす傑作長編!
著者等紹介
宇佐美まこと[ウサミマコト]
1957年、愛媛県生まれ。2006年に「るんびにの子供」で第1回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞しデビュー。17年、「愚者の毒」で第70回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
263
宇佐美さんは発想が豊富と改めて思った本作…ネグレクト・半グレ集団・危険ドラッグ・再開発街問題など社会性テンコ盛りにしてサスペンス+人情悲喜劇という難題に取り組んでいる…しかし、上手く纏まったとは言い難い。親への愛情を渇望する哀しい者が何人か登場するのに、彼らのドラマを掘り下げてないので、単なる駒のようで感情移入が弱くなってしまう。魅力的な人物を配置してあるのに書き込みが足りなくて群像劇としても巧く機能していないと感じた。辛口な感想になってしまったが、サービス精神や挑戦意欲は伺えるので、次作に期待したい♬2019/04/08
うっちー
202
少しあちこち強引2019/01/24
❁かな❁
188
宇佐美さんの作品を読むのは6作目。タワーマンションも建ち並ぶ再開発地区。歓楽街で花屋を営む桜子と高校生の娘・菫子を中心に描かれる。その街で若い女性の連続殺人事件。遺体の側には花。ネグレクト、半グレ集団、危険ドラッグなど絡んでくる。各章の冒頭のシーンや殺人の場面が印象的。少しずつ背景が見えてきて悲しい真実に胸が痛くなる。母親の愛情に飢えた登場人物たち。何度もやるせない思いになり苦しくなった。許せない思考、行動の人物が本当に胸糞悪くて殺人犯以上に許せない。盛り込み過ぎ感も否めないが全てを落とし込む手腕に唸る。2019/05/26
モルク
182
タワーマンションが立ち並び急速に発展した神奈川県湧新地区。東側は近代化の街、西側は昔ながらの商店と歓楽街。その町で起こる連続殺人事件。物語の主人公はそこで小さな花屋を営む桜子と娘の菫子。そこに桜子の同級生だった刑事とオカマやネグレクトの少年などが絡んでくる。そしてクスリ、貧困、格差、半グレ、LGBTなどいろんな要素が集まり、むしろてんこ盛り過ぎて焦点がぼやけてくる。オカマのレイカさんの生い立ちと、彼女(?)の想いを聞くと悲しい。2019/05/17
🐾Yoko Omoto🐾
181
再開発によって古き町や商店街に歓楽街、新興住宅地や商業施設が共存し混沌たる風情を見せる涌新地区で、町興しの市民ミュージカル開催決定と時を同じくして起こった連続殺人事件。町では一体何が起こっているのか。その不穏な空気と、町に流れる猥雑な雰囲気が相乗効果を生み、複雑に入り組んだ人間模様を読ませる手腕に唸る。事件の全容解明に繋がるピースは多彩だが全てに意味があり、根底に流れるのは登場人物それぞれの親子の形であるというその構成と丁寧な描写も見事。しかし世の中はどうしてこうロクでもない親で溢れているのか…。2019/02/24