出版社内容情報
現在の中東諸国で生じていることについて、「イスラームに特徴的な政教一致が問題」という紋切型の説明に疑問を持つすべての人へ。本書は、メソポタミアやエジプトに文明が発祥した古代からイスラーム政権が欧米列強と対峙する近現代までの長い歴史を射程に入れ、この土地の政教問題の錯綜した系譜を解明する。さらに、長くイスラームと共存してきたユダヤ・キリスト教社会、そして紋切り型の説明を流布してきた近現代西欧の学者たちの営為も考慮し、西アジア政教問題に関する新しい見取り図を提示する。
はじめに
序章 「宗教的なもの」をとらえ返す近現代フランスと「西アジア」に対する眼差し──マルセル・ゴーシェ、ルイ・マシニョン、ムハンマド・アルクーン[伊達聖伸]
はじめに
一 政教構造を意識して「宗教的なもの」をとらえる──ゴーシェの宗教論
二 「西アジア」のイスラームに注がれる眼差し──マシニョンからアルクーンへ
おわりに
第?部 古代──神々と王の統べる世界
第一章 古代メソポタミア──国家、神殿、学識者[柴田大輔]
はじめに
一 古代メソポタミア研究の史料
二 先行研究──ディシプリン・語彙・設問
三 古代メソポタミアの共同体と組織
四 古代メソポタミアにおける「政治」と「宗教」
おわりに
第二章 古代エジプト──ファラオと神々[河合望]
はじめに
一 エジプト学研究の史料
二 ファラオの王権
三 古代エジプトの宗教伝統と神殿
四 神官と政治
五 新王国時代における政教関係
おわりに
第三章 「古代イスラエル」──「一神教」的信仰前史を再考する[長谷川修一]
はじめに──想像の共同体としての「古代イスラエル」
一 歴史的枠組み
二 社会と統治組織
三 「宗教的」組織
四 統治組織と「宗教的」組織の関係
おわりに
第?部 古代の終焉──一神教団の成立へ
第四章 ヘレニズム時代のバビロニア神殿──古代文明の継承と新しい潮流[柴田大輔]
はじめに
一 古代メソポタミア文明の黄昏──ヘレニズム時代のバビロンとウルクの神殿
二 古代メソポタミア文明の継承
三 ヘレニズム時代・古代末期の宗教伝統の何が「新しい」のか?
四 古代メソポタミアにおける教団組織形成の歴史的背景
第五章 バビロン捕囚期のユダ共同体──ユダヤ教団の萌芽[?井啓介・渡井葉子]
はじめに
一 史料
二 バビロン捕囚は近現代の研究者によってどのように語られてきたか
三 『ヘブライ語聖書』からうかがえるユダ捕囚共同体
四 同時代楔形文字史料から明らかになるバビロニアのユダ捕囚共同体
五 ユダ捕囚共同体のバビロニア同化問題と新たなアイデンティティの創出
六 ユダからユダヤへ
第六章 サーサーン朝──イラン的「宗教」概念と王権[青木健]
はじめに──マーンサルとデーン イラン的「宗教」概念の起源
一 西アジアにおけるイラン文化の特徴と資料状況
二 マーンサルとデーンの語義の変遷
三 「デーンと王権は双生児」──四世紀のサーサーン朝ペルシア帝国
おわりに──中世ペルシア語「デーン」からアラビア語「ディーン」へ
第?部 中世──「イスラーム誕生」のインパクト
第七章 中世イスラーム政権(一)──政教関係とウラマーの知[中町信孝]
はじめに
一 政教一元論と政教二元論
二 イスラーム史における時代区分
三 後期イスラーム時代における変化について
四 ウラマーの持つ「イルム(知)」
五 ウラマーの職業
おわりに
第八章 中世イスラーム政権(二)──ムハンマド、カリフ、ウラマー[亀谷学]
はじめに
一 初期イスラーム時代研究における史料と先行研究の枠組み
二 『クルアーン』とムハンマド時代における政治と宗教
三 正統カリフ期からウマイヤ朝期にかけての政教関係
四 アッバース朝期における政治と宗教
五 政教関係を巡る場としてのモスクとフトゥバ
おわりに
第九章 イスラーム支配下のユダヤ社会──ガオン、レシュ・ガルータ、ナギッド[嶋田英晴]
はじめに
一 中世におけるラビ・ユダヤ教の展開と時代区分
二 ユダヤ史と史料の問題
三 中世のラビ・ユダヤ教とユダヤ社会における「宗教」
四 六世紀末?一一世紀前半(ゲオーニームの時代)におけるユダヤ共同体の政教関係──ガオンとレシュ・ガルータ
五 一〇世紀半ば?一一世紀半ば(ゲオーニームの時代の末期からリショニームの時代の初頭)におけるユダヤ共同体の政教関係──ナギッド
おわりに
第一〇章 イスラーム支配下のキリスト教社会──コプト教会の総主教と有力信徒[辻明日香]
はじめに
一 教会と国家
二 教会と信徒──在家信徒は世俗主義者か?
おわりに
第?部 近世・近現代──西欧との対峙
第一一章 オスマン帝国──宗教概念と政教関係[上野雅由樹]
はじめに
一 オスマン帝国期の辞書に見られる宗教概念
二 宗教をめぐる近世の用語法
三 近世から近代へ
四 多用されるメズヘプ
五 宗教と対置される政治
おわりに
第一二章 現代エジプト──憲法における宗教条項[鈴木恵美]
はじめに
一 一九二三年憲法──憲法において宗教条項が重視されなかった段階
二 一九五六年憲法──イスラームが国家イデオロギーとなった段階
三 「イスラーム国家」への接近──一九七一年憲法と八〇年改正憲法
四 同胞団規制の手段としての憲法改正──二〇〇五年、二〇〇七年改正憲法
五 宗教条項が政治闘争の手段となった段階──二〇一二年憲法と二〇一四年改正憲法
おわりに
おわりに
索引
柴田 大輔[シバタ ダイスケ]
編集
中町 信孝[ナカマチ ノブタカ]
編集
内容説明
西アジア/中東諸国に巻き起こる様々な問題は「イスラーム独自の政教一致」が原因なのか?その根源をイスラーム以前までさかのぼり、解き明かす。
目次
「宗教的なもの」をとらえ返す近現代フランスと「西アジア」に対する眼差し―マルセル・ゴーシェ、ルイ・マシニョン、ムハンマド・アルクーン
第1部 古代―神々と王の統べる世界(古代メソポタミア―国家、神殿、学識者;古代エジプト―ファラオと神々;「古代イスラエル」―「一神教」的信仰前史を再考する)
第2部 古代の終焉―一神教団の成立へ(ヘレニズム時代のバビロニア神殿―古代文明の継承と新しい潮流;バビロン捕囚期のユダ共同体―ユダヤ教団の萌芽;サーサーン朝―イラン的「宗教」概念と王権)
第3部 中世―「イスラーム誕生」のインパクト(中世イスラーム政権(政教関係とウラマーの知;ムハンマド、カリフ、ウラマー)
イスラーム支配下のユダヤ社会―ガオン、レシュ・ガルータ、ナギッド
イスラーム支配下のキリスト教社会―コプト教会の総主教と有力信徒)
第4部 近世・近現代―西欧との対峙(オスマン帝国―宗教概念と政教関係;現代エジプト―憲法における宗教条項)
著者等紹介
柴田大輔[シバタダイスケ]
筑波大学人文社会系准教授。ハイデルベルク大学博士課程修了。Dr.Phil.(アッシリア学)。楔形文字学・古代西アジア史学
中町信孝[ナカマチノブタカ]
甲南大学文学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。前近代イスラーム史・現代アラブ文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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