出版社内容情報
情動はときに誤り、害をもたらす。やはり理性に従って行動すべきなのか。理性的に生きることが幸福な生につながるのか。実はそうではない。情動こそが状況に相応しい行動を生み出すのであり、理性は情動の働きを調整しているというのが本当のところである。情動に着目することで新たな展開を見せる心の哲学の最前線。
内容説明
実は常に情に流されている!?理性は補佐役、むしろ情動こそが主役である?!意識的な感情にとどまらない無数の名もなき情動とともに立ち現れる壮大な哲学的眺望。
目次
第1部 価値と情動(立ち現れる価値的世界;価値認識の究極的源泉;葛藤する心)
第2部 道徳と情動(非劇的ディレンマ;道徳的修復;道徳の二人称性)
第3部 生きる意味と情動(感情労働;情動価と経験機械;自己物語)
著者等紹介
信原幸弘[ノブハラユキヒロ]
1954年、兵庫県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブルーハート
9
「価値、道徳、生きる意味」と、サフタイトルにもあるように情動をめぐって様々に論が展開する。これらを統合的に読めたらいいのだけど、それは筆者の問題意識で、読者は好きに読んで考えていいと思う。私は「感情労働」を扱った第7章が面白かった。あの執事スティーブンスがその例に挙げられている。2018/04/19
Bevel
6
日常的な事例、議論の明快さが揃ってるのに、なんで面白くないのかと考えさせられる。まず、結論を先に書かずに細かな議論を続けること。次に、取り上げられるテーマがどうでもいいこと。情動と身体と判断の関係性、道徳的葛藤、悲劇的ジレンマ、どうしようもない悪などを選ぶ理由が薄く、著者の関心が心理学と凡庸な道徳に従属してる。あと、情動との比較項に(道徳、自己物語、感情労働)に関して、熱量がないこと。せっかく情動には、道徳や社会哲学にまでつながる広い射程があるのに、多分、著者はこれらに興味ないと思う。2021/12/13
たね
2
この領域の哲学ば新しいので概観したくて手に取ったが、幅広い問題の射程が示されてまさしく入門にふさわしかったと思う。特に第5章の「道徳的修復」が私の関心のある問題意識と重なった。悪魔的な人間を人間と認める(人間ではないと思いきれない)情動が、新たな道徳的関係を結ぶ可能性を秘めている、という結論は今まで考えもしなかったので私の中では新しかった。最近話題の感情労働などへの言及もあり。時間はかかったが面白かった。2020/12/24
不知鳥
1
ふだん何気なく働かせていて意識もしない情動を細かく分析した本で、言語化するとたしかにそうゆうふうに情動が機能しているよなあと思った。それが分かったからといってどうとゆうこともないけど、複雑な状況に置かれて自分の感情が絡まり合ってよく分からない状態になっている時にこうやって一本一本解いていけたらよいのかもしれないと思った。2024/01/21
さんかくこんにゃく
1
序文と興味のある部分しか読んでいないが、なんというか自分には合わなかった。「事物の価値的性質が身体的反応を介して感受される」ということを著者は主張するが、価値を事物が性質として持つという考え方が私にはどうも受け入れられなかった。もちろん事物に客観的に唯一の価値が存在するとまでは言っていなくて、事物と観測者の両者を考慮することで価値の相対性を説明することはできているのだが、端的に事物"に"価値を感じるではだめなのだろうか。2022/02/21