出版社内容情報
《内容》 脳神経系の働きは,外界からの体中に張り巡らした感覚器官により,こ
れらの情報を受け取り,それぞれの処理を行った後に,各情報を処理統
合した後に各々の効果器を介して行動を起こす。外界からの入力には,
光・化学物質・音・機械刺激など様々なものがあるが,いわゆる「細胞」
という基本ユニットが様々な形で分化して感覚器官としての構造と機能
を備えている。これにより,外界の多様性に対応して感覚器の多様化を
計っている。感覚器官を見てみると多様化の中に多くの共通性が見られ
る。外界のこのような多様性に対して,感覚器官の細胞膜での情報変換
により,より単純なセカンドメッセンジャーへと変換される。異なる刺
激に対しても,細胞内では共通のセカンドメッセンジャーに変換され,
かつ,これが各感覚器官に特有な細胞応答を引き起こさせる。また特殊
な外界の刺激に対して,特殊な感覚装置を準備しながら情報変換的には
細胞内で他の感覚器官と同様なセカンドメッセンジャーを利用している
巧妙な機構に生命体の不思議を感じざるを得ない。本書は多様な情報を
どのように変換するかを各々の感覚器を例に挙げて,その分子レベルで
の解析結果を紹介して頂いている。感覚器官は,情報を単に受け取り,
変換するのみでなく,感作,脱感作,不活性化,活性化などの様々な機
構を備えて,可塑性を有している。外界に対応するための情報の収集処
理装置としての感覚器官の巧妙さを知って頂けるに違いない。
《目次》
第1章 感覚器官の情報処理機構
(匂いの情報処理線維連絡/匂いレセプター/味の情報処理/光の情報
処理 /フェロモン,鋤鼻器官と行動)
第2章 脳内チャネル・トランスポーター・ポンプ
(グルタミン酸レセプターと脳機能 /Ca2+チャネルと脳機能/IP3レセ
プター/K+チャネルと脳機能 /中性アミノ酸トランスポーター―その分
子実体と中枢神経における役割/グルタミン酸トランスポーター/ドー
パミントランスポーター/GABAトランスポーター/Ca2+ポンプ)
第3章 脳内機能分子
(カルシニュリンと脳機能/カルモジュリン依存性キナーゼと脳機能/
細胞骨格タンパク質と脳機能/開口放出にかかわる機能分子/イノシト
ールリン脂質代謝と脳機能)
第4章 新しい技術開発
(Real time PCR/近接場光顕微鏡/1分子蛍光イメージング法/ニュー
ロンの細胞膜で1分子を見て引っ張る-光ピンセット法と細胞膜研究へ
の応用/蛍光共鳴エネルギー移動のイメージング/人工脂質二重膜/
WGAトランスジーン-発生工学的手法による選択的神経回路可視化
技術/アデノウイルスを用いた神経機能解析/レトロウイルスを用いた
神経機能解析)
内容説明
本書は多様な情報をどのように変換するかをそれぞれの感覚器を例に挙げて、その分子レベルでの解析結果を紹介している。
目次
第1章 感覚器官の情報処理機構(匂いの情報処理線維連絡;匂い受容体 ほか)
第2章 脳内チャネル・トランスポーター・ポンプ(グルタミン酸レセプターと脳機能;Ca2+チャネルと脳機能 ほか)
第3章 脳内機能分子(カルシニューリンと脳機能;カルモジュリン依存性キナーゼと脳機能 ほか)
第4章 新しい技術開発(Real time PCR;近接場光顕微鏡 ほか)
著者等紹介
御子柴克彦[ミコシバカツヒコ]
1973年慶応義塾大学大学院医学研究科(生理系生理)修了。医学博士。現在、東京大学医科学研究所・教授、理化学研究所脳科学総合研究センター・発生分化研究グループディレクター。細胞内情報伝達の研究として、細胞内Ca2+オッシレーションを引き起こすIP3レセプターやイノシトールポリリン酸結合タンパク質としてのシナプトタグミンの研究をしている。さらにアデノウイルスベクターを利用して情報伝達の研究に利用している。これらの研究成果を、発生・分化の研究に組み込みたいと考えている
清水孝雄[シミズタカオ]
1973年東京大学医学部卒業。現在、東京大学大学院医学系研究科・教授・医学博士
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