出版社内容情報
枯れ木の中では多種多様な菌類による「陣地領地獲得合戦」が繰り広げられています。その様子はさながら戦国時代のよう。武将として登場する菌類には,シイタケのような立派なキノコを作る種類だけでなく,顕微鏡を使わなければ見えないようなカビもたくさんいるのです。ただし,カビといっても侮るなかれ。決して雑兵ではありません。そもそも,キノコもカビも同じ菌類の違う姿にすぎないのです。
本書では枯れ木に生息する菌類をすべて「木材腐朽菌」と呼び,森の枯れ木の中で彼らがどのような暮らしをしているのか紹介します。最近の菌類生態学の大きな進歩の一つに,キノコではなくその本体である菌糸の野外でのふるまいに関する知識が急速に増えたことがあげられます。本書では,こういった最新の研究成果を盛り込んだ菌類生態学の解説を目指しました。
目次
1 木材腐朽菌と木材
2 木材腐朽菌による材分解の多様性
3 枯れ木の中は戦国時代
4 木材腐朽菌の生活史戦略
5 ブナの原生林へ
6 シイタケのホダ木の中をのぞく
7 木材腐朽菌群集と分解機能
著者等紹介
深澤遊[フカサワユウ]
2008年京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻博士後期課程修了。現在、東北大学大学院資源生物科学専攻助教博士(農学)。専門は森林生態学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
21
#説明歌 カビキノコ菌類有性生殖と無性生殖別名があり 木材と腐朽菌類生活史ブナの原生林としいたけ2017/09/13
厩火事
6
若手研究者の書いた専門的なでもライトな森林微生物学の本です。最近この手の本増えていますね。内容としては深からず浅からずちょうど良かったと思います。本の中に登場する著者の妹さんのイラストがいいです。2018/01/11
やま
4
木が死んでからどのように、朽ちていくか。ちょっと難しい部分もありますが、比較的分かりやすく書かれています。目からうろこ的な部分も多く、枯れた木の中での菌類の状態が理解できます。枯木から出てくるキノコの見方が少し変わりました2017/09/22
ckagami
3
森の枯れ木を分解する微生物についての本。なのだが、ところどころ著者や著者周辺のぶっ飛んだ生物学キ○ガイの生態も明かされ爆笑しつつ突っ込みが追いつかない。(ツッコむひとがいないのでぽかんとしてしまう)著者の妹さんのイラストも味わい深くてよい。2019/12/26
人生ゴルディアス
3
面白かった。『地中生命の脅威』が面白かったので類書かなと思って手を出す。未知の分野なので、残念ながら種名などは読み飛ばし…。白色腐朽、褐色腐朽、軟腐朽の三種類で枯れ木が朽ちていき、それぞれセルロースを守るグリニンをどうするかで色が変わったりするとのこと。腐朽カラムとかも面白い。とはいえ基本、枯れ木が朽ちていく話が主題で、外生菌としての生態みたいなことはさらりとした感じ。菌の生物学的な記述も思ったより少なめだった。物足りなくて著者の他著書や紹介されていた文献を読みたくなったので購入済。2019/11/03