出版社内容情報
日中ハーフの残留孤児二世が成長し結婚するまでの苦闘と、自己確認のための中国への帰郷を、情緒豊かに描く力作(解説・関川夏央)
内容説明
「ここ以外ならどこへでも―」死と隣り合わせにいるような貧しい農村を後に、小蓮たちは日本に来た。中国では残留孤児の母ゆえに日本鬼と呼ばれ、日本では「中国人」といじめられた。それでもなおこの国での将来を模索する小蓮の中国帰郷を中心に、戦後日中の実像を描く。講談社ノンフィクション賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
175
第15回(1993年)講談社ノンフィクション賞。 残留孤児二世の若者たちの物語である。 満智子の人生を通して窺える当時の中国と 日本の風景は、読んでいると なぜか懐かしい。 中国が 日本に比べて まだ 貧しかった時代に 生きた 二世たちが 感じた異邦人の感覚を 丹念に描く。国籍・家族のあり方が 時代風景とともに 現代に伝わる、そんな本だった。 2017/11/11
wei xian tiang
3
帰国者家族の生活は経済以外のあらゆる意味でも厳しい。血族の関係も、日本社会より濃密で近く激しいが、近さと濃密さは必ずしも安定を意味しない。とりわけ夫婦関係は常に薄氷の上にあるようなものである。その危うい、ぎりぎりの所で支え合っている関係は、居間にタレ流される浮ついたテレビ番組の挑発で簡単に崩壊に向かう。テレビの破壊力、絶対に人に幸せをもたらさないことがよく分かるエピソード。テレビ局にとっては家族も社会も必要なく、アトム化した商品購入者であるのが一番都合がいいから。2013/10/10