内容説明
むかし南京に住まう貴公子がおりました。山のような富を持ち、美貌と才智に恵まれた物憂げな青年が恋に落ちたのは、人ならぬ、麗しい人魚でありました―。幻想譚「人魚の嘆き」「魔術師」「鴬姫」、自伝的作品「異端者の悲しみ」ほか、大正期に書かれた艶やかな作品の数々を収載する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あおい
24
「人魚の嘆き」ああ。文章が綺麗すぎる。大人のおとぎ話。本当に本当に好き。ずっと浸っていたい。/「異端者の悲しみ」再読。谷崎作品の中では異色な、自伝的作品。とは言っても他の自伝的作品である「羹」や「神童」とは違い、本人が「告白書」と宣言しているほどの。文学作品としての出来はともかく、あんなに自信に溢れて好きなものを追求していたかのように見える谷崎の計り知れないほど深い精神的堕落に感情移入せずにはいられない。良くも悪くも人間味に溢れる作品。/感想を書いていないものは未読2019/02/04
訪問者
5
この巻も再読である。「鬼の面」、「人魚の嘆き」、「魔術師」も素晴らしいが、「異端者の悲しみ」は「神童」や「鬼の面」と同様 、谷崎の学生時代を描いた作品であるが、その中でも本作が一番の傑作だろう。2019/07/19
ムーミンママ
1
《人魚の嘆き》を読みたくて借りた。《鶯姫》と単行本未収作品《美男》《亡友》が面白かった。2019/02/08
訪問者
1
「人魚の嘆き」「魔術師」は初期谷崎の煌く様な輝きがある一方、「異端者の悲しみ」はそういう作品を生み出す小説家の生の人生と生活を描いていて、読んでいて辛くなる。2016/04/15
Hisashi Tokunaga
0
「大田文学ってどう」;「ハッサンカンの妖術」ハッサンカンの住所は荏原郡大森山王123番地だ。谷崎の親友になる和辻哲郎の新婚新居は大森山王2600番地だそうだ。芥川の「魔術」のハッサンカン住居は山王であるが詳細は不明。共通しているのは夜分の降り頻る雨だ。嘗ての大森山王の雨は東京都心に比べて魔性性があったのだろうか?同書に掲載されている「魔術師」は大森山王ではないのが残念?2016/03/16