中公文庫<br> 昼も夜も彷徨え―マイモニデス物語

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中公文庫
昼も夜も彷徨え―マイモニデス物語

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  • サイズ 文庫判/ページ数 492p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122065253
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

出版社内容情報

異国を長い間旅していると、日本語の活字に飢えてくる。とくにイスラーム圏にいると、日本の本が手に入る可能性はまずない。 
私がエジプトとシリアに住み、その後シリアから陸路で国境を越えてトルコからギリシャ、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルまで地中海世界を放浪したのは世紀の変わり目で、スマホもまだなく、ようやく町のインターネット・カフェで日本とメールのやり取りができるようになった頃だった。 
そんな環境だから、住んでいる者や、すれ違う旅人どうしで手持ちの本を交換しあうのは宝の交換のような喜びだった。そうして出会った一冊の本の中に、「昼も夜も彷徨え」というマイモニデスの言葉がのっていた。その言葉は、故郷から遠く離れ、異邦人として、旅人として生きていた私の心に、静かに寄り添うように響いた。 帰国してからマイモニデスについて調べてみたが、これはとんでもないものに心惹かれてしまったな、と思った。宮廷侍医だけではなく、中世最大のユダヤ教の思想家であり、哲学者であり、一流のタルムード学者。とても門外漢の私の手などにおえる相手ではない。 
一方で私は、マイモニデスが生きたイスラーム世界の空気を肌で感じていた。彼が渡り歩いた土地の多くを、私もまた旅していた。 コルドバの路地裏で石畳の音を聞いた。地中海を渡る船でザコ寝して夜明けを迎えた。砂漠に寝っ転がって、満点の星空の下で眠った(本当に、まぶしくって、眠れやしない!)。砂と人いきれでごった返すカイロは、旧市街に行くと、十二世紀の地図を頭に入れても動けるぐらい当時の面影を残していた。 もしも土地に記憶というものがあるならば、その記憶をたどってひとつの世界が描けるかもしれない……。いつしか私の中で、物語が勝手に言葉をつむぎはじめた。――「あとがき」より

内容説明

イスラーム教徒とキリスト教徒が抗争する十二世紀の地中海。勢力を広げるムワッヒド朝が突きつけた「改宗か死か」。神を求める人間の葛藤、迷い、失望と愛憎。マイモニデスはスペインからエジプトへと異郷を放浪しながら、言葉の力で迫害に抵抗し、人々に生きる勇気を与える。史実に基づき、中世最大のユダヤ思想家の波瀾の生涯を描く歴史物語。

著者等紹介

中村小夜[ナカムラサヤ]
山口県生まれ。コピーライター。コラム、エッセイなども手がける。コーランの響きとアラビア文字の美しさに魅了され、イスラーム世界を旅する。1999‐2001年、独裁政権時代のエジプト・シリアに滞在し、現地の日常生活をつづった「埃及千夜一夜」、「シリア千夜一夜」を文芸誌に寄稿。イスラーム世界の魅力を物語で伝えたいと思い、筆をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

66
中世のユダヤ社会に彗星のごとく現れたユダヤ史上最大の思想家、モーセ・ベン・マイモン、ラテン語名マイモニデス。少年の頃から学識のあるラビたちにさえ自分の考えを真っ向からぶつけ一歩も譲らなかった彼は、自分の意志が強いだけではなく、彼のように強くなれない信者、彼のような特権階級にない弱い立場の信者に常に寄り添う考え方をした。最高の医者でありセラピストであり、偉大な思想家。彼の生き方考え方は、どんな時代の、どんな宗教を信じる人にも通じる、普遍的なものだ。彼の生き方に打たれ、なにより、作者の彼への敬意を強く感じた。2018/05/04

rosetta

13
★★★★☆12世紀のユダヤ学者モーセ・ベン・マイモンの物語。ラテン語表記でマイモニデス。7代続くアンダルシアの律法学者の家系に生まれ迫害を逃れてマグリブからエルサレム、エジプトに。当時としても最高の学者であったが後に残した影響の大きさは計り知れない。とか言いながら自分も初めて知ったのだが。信仰と知性のせめぎあいでは知性に重きを置くと言う自分好みの、しかし中世ではあり得ないほど珍しい学者。これがイスラム世界ではなくヨーロッパだったら異端として粛清されていただろう。ルネサンスの先駆けと言っていい。2018/04/23

さえきかずひこ

11
12世紀、今のスペインからエジプトまでの拡がりをもつイスラーム世界を流浪したユダヤの思索者、マイモニデスを題にとった知的な娯楽小説。彼の思想的なインパクトやユダヤ教の細かな点には立ち入らずあくまでも彼とその周辺人物たちが広大な空間を舞台に動き回る冒険活劇として分かりやすく楽しく仕上げている。題材が特殊なので大人気を博すことはないだろうがシーンの書き分けが著者がコピーライターゆえかよくできているのでアニメ化にも適したシナリオのような作品だと感じた。第6章はとても読みごたえがあって伏線もきれいに回収されます。2020/11/28

月華

5
図書館 最初は堅苦しいお話かと思いましたが、思っていたより読みやすかったです。タイトルの『昼も夜も彷徨え』は内容を全て現しているように思いました。この言葉はマイモニデスの言葉との事です。著者はこの言葉をきっかけにお話を考え始めたそうです。モーセとダビデの関係はゴッホとテオをなんとなく思い出しました。女性陣が総じて精神的に強いように思いました。「真実は美しい。しかし嘘もまた」という言葉があるそうです。史実をもとにしつつ、物語だということで、あとがきに引用されていました。 2018/03/03

おだまん

4
青春アドベンチャー放送原作本。12世紀イスラムの世界。ファンタジーチックで軽く読めるけれど史実に基づいたしっかりとした物語。キャラクターのたち方が本当に生き生きとしていて楽しいのです。2023/03/11

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