出版社内容情報
幕府崩壊後、徳川家臣団の一部は北の大地へ向かい、榎本総裁のもと箱館に蝦夷共和国を設立する。だが海峡を突破し新政府軍が上陸。圧倒的な攻勢を前に土方は倒れ、武揚は――。
佐々木譲、畢生の歴史巨篇ついに文庫化!
内容説明
押し寄せる西軍の前に奥羽越列藩同盟の雄・仙台藩が降伏、会津は陥落した。榎本武揚は徳川家艦隊を引き連れ蝦夷ガ島に向かい箱館を攻略。英仏米露普を相手に自治州を宣言し、蝦夷共和国を樹立する。だが荒天により開陽丸を喪い、西軍が海峡を突破!五稜郭に拠り奮戦するも、土方歳三は倒れ、武揚は…。全面改稿の決定版、堂々完結。
著者等紹介
佐々木譲[ササキジョウ]
1950年3月、北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。90年『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を、10年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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如水
35
本巻は五稜郭戦で話はほぼ終わります(その後の話を読みたかったのですが💦)。この巻頃から武揚が何をしたか?を良く知っていたので3巻纏めた感想を。『開陽』で始まり『開陽』で終わる。星(北斗七星)の意味でも船の意味でも。コレに尽きると思われます。後、『共和制』を日本国内では先駈け、『蝦夷共和国』を作り理想郷を追い求めた…が実は建前は…と言う所も。ザっと考えても戊辰戦争初期では考えられない様な戦略、思想が五稜郭戦では敵味方共々築かれていた、と考えると物凄い速さ(約1.5年で)の進歩だった、と思える物語でした。2021/09/17
誰かのプリン
20
江戸より脱出した榎本艦隊を待っていたのは、嵐により主要艦開陽丸の座礁だった。敗北の全ての予兆はここから始まる。時代は変わるけど、源 義経が九州に逃げる時やはり嵐に遭って、九州落ちを断念したんだよね。★★★★☆4.52018/09/15
入江
12
うーん、面白いんだけど…。榎本武揚からみた幕末、設定がまず面白いです。徳川慶喜や勝海舟にこそが欠陥であった立場で描かれる。開陽丸の最期も知りませんでした。なにより、共和国を作ろうとしていたことに驚く。タイトルも『蝦夷共和国』にした方がいいんじゃないでしょうか、って気に。何よりも、主人公が出木杉君なので、悲劇だなぁとは思いますが心に残りません。あの時代に、あそこまで考えたのだから、もっとめちゃくちゃな人なのでは? 「武揚伝」なら、あの後こそ、もっと見たいなぁ。 2019/01/28
Naoko Fukumi Fujita
10
3番目に好きで、誕生日が同じ作家の本。きっかけは週刊文春や週刊新潮の連載にはまったことでした。時代小説の三部作、しばらく積読状態でしたが昨年秋にラジオドラマの放送があり、「英龍伝」に続き読み始めました。こちらは下編です。一番好きな作家の「ジョン・マン」連載を購読しているため、すんなりと読めました。蝦夷地が舞台、節目節目に訪れる天候不順、そしていつも描写は美しくせつない・・・。あとがきもよかったです。解説にもある「M」は私も落としどころと感じました。これからも応援しています!2019/01/21
ksk
8
いよいよ箱館戦争。共和国の夢を目指して蝦夷共和国へ向かう。これまで武揚はあまりにも万能ヒーロー感を出していたが、蝦夷共和国で総裁になってからは開陽丸についてもアボルダージュニついても失敗続き。共和国という理想と事実上の海軍の消滅、兵力や経済力における京都政権との圧倒的力量差とのはざまで悩み続ける。最後の演出は良かった。これそのままミュージカルや大河ドラマにできるんじゃないかという。様々な伏線が最終的に結びついた。後半生の「明治最良の官僚」としての武揚も見たいものである。2018/02/05