内容説明
九州の地頭の子・五郎太は朝鮮出兵に叛逆し、妻子領民を殺された。後に五右衛門を名乗るこの男は追放され、絶望の旅路を彷徨う。マニラで出会った異端の神父、自由を求め舞う女、そして太閤暗殺へ。足裏に刻んだ「仏」の字を踏みにじり、それでも生きる男に訪れた恩寵とは。生の意味を問いかける傑作長篇。
著者等紹介
萩耿介[ハギコウスケ]
1962年東京生まれ。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒。2008年『松林図屏風』で第二回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
86
面白かったです。歴史小説の形をとりながら宗教的な部分を掘り下げているのが興味深いところでした。石川五右衛門の絶望と共に、仏の文字を踏みつけた絶望的心理が生きる意味を問いかけているようでした。そこにキリスト教を絡めていく。極めて救いはないのですが、五右衛門の生涯とキリストの生涯がかぶるようで引き込まれるものがあります。2017/07/11
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12
恩寵を求めて、足の裏に「仏」を刻んだ男は、確かにその名を刻んだ。歩を進める度に仏を踏み躙る生き方しか選べなかった五郎太、後に五右衛門と名乗る男の生涯。赤い景色に彼は何を見ていたのか。救いを求めた一人の男の巡礼の物語。2020/03/04
Åκ
6
表紙のキリスト、帯の佐藤優さんの推薦だけで手に取った本。まさかの五右衛門だった。人はこれほど残忍な生き物であり、生まれてくる環境で、どれだけの差が生まれるのか。それも、自分が選び望んだ行き方。五右衛門さん、仏は常にあなたの中にいたのですよ。2017/07/15
唐辛子仮面
5
表向きは歴史小説風。取り扱うテーマは宗教、哲学的。原題は「極悪 五右衛門伝」。五右衛門とは天下の大泥棒で有名な五右衛門。タイトルの「グレイス」はキリスト教の「神様の恩寵」のこと。家族を殺され極悪人として復讐に生きる主人公。そのような者にも恩寵は訪れるのか。2017/05/10
へいがぁ
5
ストーリーは理解できたように思いますが、五右衛門とイエスの共通点が判りませんでした。2017/04/12