内容説明
女の胸をかき乱す、淋しさ、愛欲、諦め、悦び―。安野モヨコが愛した、女心のひだを味わう傑作群。孤独な男を残酷なまでに誘惑する「耳瓔珞」、愛している男を自分の親友と結婚させる「むすめごころ」など―繊細な挿絵とともに、円地文子、川端康成、白洲正子、岡本かの子、有吉佐和子、芥川龍之介、織田作之助らの奥深い魅力に出会える、好評シリーズ第二弾。
著者等紹介
安野モヨコ[アンノモヨコ]
昭和46年(1971)、東京生まれ。漫画家。「まったくイカしたやつらだぜ」でデビュー。エッセイスト、絵師としても活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けいこ
40
女ごころについて安野モヨコさん選の10遍。デート中に安い葱を見つけて買っちゃう『葱』。子供を産んで女から母になる『あばばばば』は、どちらも芥川龍之介の作品。女心というか女の習性みたいなもので、ちょっとわかると笑ってしまう。少女の気持ちが視覚と共に伝わる岡本かの子の『快走』。自分の好きな人を親友と結婚させて後から嫉妬する川端康成の『むすめごころ』はちょっと百合系の話かな。理解し難い。女ごころより父親心が切ない有吉佐和子の『地唄』。女の部分を残酷なまでに出した円地文子の『耳瓔珞』。など。どれも味わい深い1冊。2022/01/15
メタボン
35
☆☆☆☆ 渋い短篇ばかりで通好みのチョイス。川端康成「むすめごこころ」こんな短篇があったのを知らなかった。親友に彼氏をあてがう女の心を手紙で表現。雑貨屋の風景と女の赤ん坊をあやす声が印象的な芥川龍之介「あばばばば」。河川堤防での爽快な走り、岡本かの子「快走」。芸事に真摯な父娘の心理を古風に描く、有吉佐和子「地唄」。死口と呼ぶ空洞を抱える女の情念、円地文子「耳瓔珞」。寺田屋の女房登勢の一代記、織田作之助「蛍」。鳥屋と手足の不自由な妻の入浴光景が美しい、川端康成「神います」。2020/02/11
くさてる
27
安野モヨコが選んだ「女心」に関する短篇アンソロジー。イラストも添えられています。どの作品も逸品で楽しめました。少女のなかにある自由の象徴が微笑ましく描かれているのだろうけど私にはせつなくてならなかった、岡本かのこ「快走」と、女性の残酷さと肉欲をはっきりと描いた円地文子「耳瓔珞」、もはや言葉も無い川端康成「むすめごころ」の三作がとびぬけて素晴らしい。文庫本で手軽に近代作家の優れた短篇小説を読むことが出来るアンソロジーとしてお勧めです。2017/07/05
ジュンコ
15
私の中でしばらく続いている川端ブームの一環で。芥川の葱もよかった。安野モヨコの挿絵も好き。2018/02/11
あんこ
15
安野さんの挿絵に惹かれて。やっぱり川端康成の少女(から女性)を描く作品は素敵。「むすめごころ」は切ない。ハッピーエンドにならない少女小説のようで、描写もまた瑞々しい。あとがきで安野さんが言うように、岡本かの子の小説はものすごく視覚的で読んでいて心躍るものがあった。芥川の二篇は笑いました。おしゃれな小物も出てきて想像するのが楽しかった。2017/06/30