内容説明
辛口の批評家正宗白鳥をして「人生悠久の姿がおのづから浮かんでゐる」と言わしめたデビュー作「楢山節考」。表題作をはじめとする初期短篇のほか、中央公論新人賞「受賞の言葉」や、伊藤整、武田泰淳、三島由紀夫による選考後の鼎談などを収録。文壇に衝撃をもって迎えられた当時の様子を再現する。
著者等紹介
深沢七郎[フカザワシチロウ]
大正3年(1914)、山梨県に生まれる。日川中学校を卒業。中学生のころからギターに熱中、のちにリサイタルをしばしば開いた。昭和31年、「楢山節考」で第一回中央公論新人賞を受賞。「中央公論」35年12月号に発表した「風流夢譚」により翌年2月、事件が起こり、以後、放浪生活に入った。40年、埼玉県にラブミー農場を、46年、東京下町に今川焼屋を、51年には団子屋を開業して話題となる。56年『みちのくの人形たち』により谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
105
初期短編集。三島由紀夫らによる新人賞選評も併録。どれも人間の業が剥き出しになっているような話。「楢山節考」は民話を題材にしており、寓話的な残酷さを見せる一方で肉親の深い情愛も垣間見え、それらが入り混じった得も言えぬ情感に包まれる。老母おりんが自ら歯を叩き壊して喜ぶ姿は哀しみとおかしみで呆然。陰鬱な雰囲気で占められないのはおりんの屈託の無さがあるからだと思う。根底にあるのは自らの個を犠牲にして家の存続を大切にするもので、今の価値観とズレがあるが彼女の無垢な愛情が感じられる。何とも深い印象を残す作品だった。2020/01/13
fseigojp
25
遠野にはデンデラ野というところがあり年を取るとそこへいき、冬以外は里におりてきて田畑をてつだったとあります これも姥捨ての一種でしょうね2015/10/01
Yusukesanta
16
「東北の...」だけ。とても爽やかで奇想天外な童貞小説。神武(ズンム)というのは野良をさせたりして総領より以下の「飼殺しのヤッコ」などと云われこき使われて女ともくっつくのはダメという可哀想な存在。最後のあたりで「怒ったように音をたてて月がシューシュー」でてきて山の上にのぼる場面があるが、金井美恵子の「柔らかい土をふんで、」という小説で引用というか、とにかく「月がシューシュー」を借りていて、これか!と確認もいたしました。それは著者が日劇でギター弾いてたからペーパームーンを模した表現?というのは金井さんの言。2016/04/26
アトレーユ
4
表題作は、簡単に言うと、姥捨て山のお話。他にも、当時は人口の大多数であった地方の下層民たち、そこに口承で伝わる歌や躍りなどの民俗的なものも加えて、土着の日常を描いている作品群。予想外に端正な文章だった。こうゆうの、すごく好き。「一生懸命生きている」からって清廉潔白・聖人君子なわけはなく。嫉妬、盗っ人もいれば、親を思う子の気持ち、子を思う親の気持ち、いろんな思いが日常の中を渦巻いて流れていく。それを垣間見れる小説って滋味があっていいなぁと思う。2015/08/15
CTC
4
例の『風流夢譚』による嶋中事件の件があるから深沢七郎という人には興味があった。そして代表作を含む短編集が編まれたと聞いて手に取ったのだが、なかなかどうしてとんでもないモノを読まされたなぁと。民話を読んでいるような不思議な雰囲気とテンポ、ユーモア、しかしどぎつい題材。文句無しに面白い。まぁ、小説を読みつけない私にはそう感じたということです。しかしネットで『風流夢譚』全文読める。Kindle版も出てる!時代ですなぁ。2014/10/03