内容説明
香辛料、絹、綿製品、砂糖、茶葉、コーヒー、チョコレート、そしてアヘン―。人間の限りない物的欲望を背景にして人、物、金が世界を巡り、アジアと欧米は徐々に一つの世界システムを構成していく。海洋を舞台に、近代世界の転換期を描く、五百年の物語。
目次
1 大洋の時代
2 衣食住の国際政治
3 ひとつの世界へ
4 ヨーロッパの生活革命
5 ヨーロッパの工業化とプランテーション開発
6 「パクス・ブリタニカ」の盛衰
7 戦争と植民地支配
8 日本開国とアジア太平洋
9 二十世紀の新展開
著者等紹介
加藤祐三[カトウユウゾウ]
1936年、東京生まれ。60年、東京大学文学部東洋史学科卒業、66年、同大学大学院人文科学研究科東洋史学専攻博士課程中退。東京大学東洋文化研究所助手、横浜市立大学助教授、教授、学長を経て、名誉教授。アジア史、文明史、横浜学を専攻
川北稔[カワキタミノル]
1940年、大阪市生まれ。67年、京都大学大学院文学研究科博士課程中退。大阪大学文学部助手、大阪女子大学助教授、大阪大学助教授、教授を歴任。現在は、大阪大学名誉教授、京都産業大学教授、国際高等研究所副所長。イギリス近代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mzo
16
アジアと欧米の間の交流・交易がテーマという、このシリーズでは珍しい一冊。一般的な歴史の見方と違う角度から捉えていたりするので、なかなか面白かった。特に、幕末の日本開国をアメリカの立場も踏まえて書いた辺りは秀逸。学校の授業では「欧米諸国の外圧に屈した」って習ったけど、それでは本質が掴めていないことがよく分かる。双方、極めて理性的に交渉に当たっていたのですね。うーん、勉強になりました。2015/10/14
MUNEKAZ
14
近世から近代にかけてのアジアと欧米世界の関りを、「世界システム論」を交えながら解くというシリーズの中でも異色の一冊。今となっては類書も多くあるのでテーマ自体に珍しさは無いが、本書の面白さは幕末日本と欧米世界の接触にページを割いているところか。直前に清朝の顛末を描いているだけに、幕府が上手いことやって欧米との衝突回避に成功したことが際立っている。結果がどうあれ幕府は崩壊してしまうわけだが、近代日本が周辺から中核へと躍り出た背景には、当時の幕府の外交努力があったことを忘れてはいけないだろう。2023/04/21
coolflat
13
111頁。近代世界システムは、コロンブスやガマの航海を前提として、ヨーロッパ人の主導のもとに成立した。それはあくまで「ヨーロッパ(を中核とする)世界システム」となったのであり、「明朝世界システム」とはならなかった。なぜか。明朝などの中華システムとヨーロッパのシステムには、決定的な違いが一つあった。すなわち、後者は政治的統合を欠いた経済システムであったということである。中華システムの「中核」は、明であれ清であれ、とにかくユーラシア大陸の東部一帯をひとまとめにして支配する「帝国」となっていたのに対して、2017/09/05
KAZOO
12
この巻は、アジアと西欧米世界とのかかわりについて論じたもので、若干ほかの巻とは趣を異にしています。それぞれアジア糸欧米諸国は生活や嗜好品が異なり、その観点から交易などに観点を充てて過去500年にわたる交流状況を描いています。最初はプランテーション的な位置づけであった国々が植民地支配を受け欧米に搾取されていく様を説明してくれています。このような観点からの歴史を見るというのも面白いと思いました。2014/03/17
yagian
3
川北稔担当の章は世界システム論の概論がわかりやすく解説されている。加藤裕三担当の章ではペリーの側から見た日本開国の経緯が興味深かった。世界システム論関連の書籍もそれなりに読んだから、そろそろ本丸のウォーラーステインに挑戦してもいいころかもと思っている。「21世紀の資本」のr>gの図式も、世界システム論とあわせて考えてみるとおもしろいかもしれない、とふと思った。2015/03/26