内容説明
日本語とはどのような言葉なのか?神話の分析から日本文化の重層的成立を明らかにし、文化の進展に伴う日本語の展開と、漢字の輸入から仮名遣の確立に至るまでを説く。日本語に対する著者の情熱に裏打ちされた、歯切れのいい日本語の成立史である。
目次
第1部 文字の無かった時代(神話の時代;日本語の重層的成立;語彙の発達;音韻の変遷;日本の東と西)
第2部 漢字で日本語を写した時代(渡米人が漢字を教える;文章を制作しはじめる;ウタを記録する;文法についての自覚を持つ;漢詩を作り漢文を訓読する)
第3部 仮名を作って日本語を書いた時代(女手の世界;漢字を使い馴らす;定家仮名遣)
著者等紹介
大野晋[オオノススム]
1919年、東京に生まれる。1943年、東京大学文学部国文学科卒業。専攻は国語学。恩師橋本進吉博士の上代特殊仮名遣の研究を発展させた「上代仮名遣の研究」がある。学習院大学名誉教授
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
55
日本語タミル語起源説は、今でこそ忘れられた存在かもしれないが、神話の共通性の分析をはじめとする、日本文化の起源を探求する試みは、さすがに読ませるものがある。2002年の文庫化にあたって改稿されているので、新しい知見にもとづく論述も興味深く読めた。東アジア世界の変動が、日本語の歴史にも大きな変化をもたらしたことがわかるし、渡来系の人々がもたらした効果もかなり具体的に述べられている。今の日本語の姿は、けっして自然発生的なものではなく、歴史的にさまざまな外因の重なったフィルターを通して見た姿であるということだ。2023/02/14
MrO
3
こういう壮大な絵を描ける学者ってもう出てこないのかな。恐ろしく広大な学識。2022/07/25
bittersweet symphony
3
言語のような基幹的な文化ですら純粋培養的に生成する物ではないという当たり前の事実を詳細に検証していく内容。ヒトが育んできた文化というものは基本的にハイブリッドなものなのである。そう考えられない奇特な人が道を間違うわけですな。2019/06/18
四四三屋
2
特に日本語の起源について関心が会ったわけではないのですが、読み進めるうちにドンドン面白くなっていきました。特に漢字は、三期にわたって系統の異なる渡来人が指導したためにその発音が微妙に違うこと、つまりは漢字に「呉音」というものが存在する明確な理由がはじめて腑に落ちた気がします。このように知っていると思っていることも、実際にはよく理解していなかったことがわかりました。本書は実に示唆に富む作品であった。2015/04/29
skydog
1
私たちの言語である日本語の歴史の変遷について書かれている。まだ文字を持たなかった時代のこと、漢字という文字が入ってきた時代のこと、漢字を日本人が使う日本語、やまと言葉にいかに合うように苦心があったか……。 現代の日本語が成り立っている背景には、長い年月の日本人の苦心・工夫の上に成り立っていることがよく分かる。 内容もそれほど難しくなく、とてもお勧めできる書籍である。2015/07/22