内容説明
関羽、張飛が非業の死をとげ、主君劉備も逝き、蜀の危急存亡のとき、丞相孔明は魏による悪しき統一を防ぐため、輿に乗り白羽扇で軍を率い、五丈原に陣を布く―。史料の徹底的な吟味によって鮮やかによみがえる孔明の「志」と感動的な生涯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
46
吉川英治文学賞受賞作品で、三国志の蜀の劉備玄徳の名軍師、諸葛孔明が主人公の歴史小説です。下巻です。著者は私の好きな直木賞作家の陳舜臣先生です。この作品の孔明像は、人々の脳裏に焼き付く奇略を縦横に駆使する軍師の面影は全くありません。むしろ、陳舜臣先生の描く孔明像は、どこまでも理知的な宰相としての孔明でした。この作品で興味深かったのが、南蛮の孟獲が、冷静で思慮深い感じで、なんかカッコ良かった所です。他の作品に出てくる孟獲とは、キャラが全然違いましたが(笑)、それはそれで面白かったです。良作でした。2016/08/23
AICHAN
45
図書館本。史実に近い孔明が描かれていると思う。「三国志演義」のような神がかった孔明、奇術のような軍事作戦も出てこない。人間・孔明が描かれる。したがってハラハラドキドキの展開はないしこれといった盛り上がりもない。最も重要なポイントは、孔明を天下の安定だけを求めた民政家として描いている点だ。丞相であり軍事専門家ではない孔明自らが五丈原まで戦ったのは蜀に軍事の人材が乏しかったためだろう。ただ五丈原で死んだとき敵の司馬仲達が孔明の奇計と感じて退却したことを思うと孔明の知略は相当恐れられていたのだとは思う。2018/10/27
Y2K☮
41
再読。著者によると孔明は中華統一を必ずしも目指しておらず、三つの国が繁栄を競う中で人々が幸せに暮らせれば、と考えていたらしい。何もしなければ圧倒的強者の魏にいずれ併呑される。それを防いで三国鼎立を続ける為に何度も戦を仕掛けたのだと。一理ある。中国でもアメリカでもロシアでも広大過ぎる国土を一つの政府が統治すれば、少数派や弱い者まで目が向かなくなるのは必定だから(さほど広大でもない日本がその顰に倣っている現状は実に残念)。民衆目線で情を重んじつつ、法を遵守して愛弟子の馬謖を泣いて斬る。私心を持たぬ政治家の鑑。2015/06/22
ユーさん
25
一人の書生として、一人の軍師として、そして、一人の総司令官として。巨大化する組織を、どのように纏めて行くか。歴史的背景もさることながら、組織的背景も伝え方や使い方の手法が結構リアルに書かれており、さすがとしか言いようがありません。 2019/04/29
zoros
9
よくある神がかりな人物として描かれてないところがよかった。2021/09/06