内容説明
ドゴールが学びキッシンジャーが倣った卓越せる指針。現代に大きな示唆を与える政治遺産の価値。
目次
3(イギリスとウィーン体制―国益と会議外交;「コンサート」なき均衡)
4(政治術の衰退と均衡体系の崩壊―第一次世界大戦の勃発)
エピローグ 古典外交と現代外交
著者等紹介
高坂正堯[コウサカマサタカ]
1934~96。国際政治学者。哲学者・高坂正顕の次男として生まれる。京都大学法学部で国際法学者・田岡良一に師事し、卒業後ハーヴァード大学留学。1963年『中央公論』に「現実主義者の平和論」を発表して論壇に登場する。冷戦時代から共産主義国家には批判的で、現実に即した保守政治評価や国際政治観を表明した。専門は国際政治学、ヨーロッパ外交史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
12
前巻で語られた「古典外交」が、まさに崩壊する様が論じられる。一つのヨーロッパという意識の衰退や自国の利益を第一に考えるリアリストの台頭など、古典外交の基層を成した部分がいかに変化し、世界大戦の破局に至ったか。カニング、ナポレオン三世、ビスマルクら新時代の外政家たちを通して、明晰な分析が展開される。ただ著者は古典外交を過去の物と切るのではなく、国益と均衡という背反するものを調和させる態度や技術、そして何より策略に頼らない「誠実さ」など現代外交に行かせる部分も指摘する。敢えて「古典」外交と記す所以である。2023/07/17
masabi
10
【概要】ウィーン体制の崩壊と第一次世界大戦の勃発を描く。【感想】各国首脳部からヨーロッパの紐帯という共通の理念が失われ国家利益が主役に躍り出る。それを体現したのがビスマルクである。ドイツ統一と安全保障を担った絶妙な政治術と迅速な軍略がビスマルクが去った後にもドイツには栄光を、周辺国には強烈な脅威を刻んでいった。いかに迅速に軍を展開できるかで勝敗が決し、その為に時間のかかる外交交渉の出番を狭めた。しかし、時間のかかる外交交渉こそがウィーン体制を成立せしめたのである。2020/09/06
バルジ
4
ウィーン会議でその頂点に達した「古典外交」は大衆化とナショナリズムの押し寄せる近代の中で徐々にその基盤を崩される。そうした中で「国益」概念を最前面に押し出し多国間協調に重きを置かない指導者が登場する。その指導者とはかのビスマルクであるが、彼はその類稀なる政治術を以て自国の利益が最大限考慮される思想的基盤無き国際秩序を構築する。しかしこの秩序はその施工主たるビスマルクの退場により脆くも崩壊、後任者は複雑な政治術を忌避する「正直」な政治を標榜し、「古典外交」の政治術は消滅するに至る。その結末が1914年である2020/08/30
コウヘイ
2
上巻に続いて下巻も名著。特にエピローグにあった「問題の最終的な解決は不可能なのである…その時わざが決定的な重要性を持つ」という一節。解決が不可能であるという「諦観」に打ちひしがれながらも、解決に近づこうという「誠意」が外交を担うものには必要だと解釈した。この一文は安易に改革を叫び、問題の「解決」を求めてしまう我々にも突き刺さるものではないだろうか。理論から導出された解決に飛びつくのではなく、解決できないという諦観無くして、次代はないと思う。2020/02/06
(ま)
2
踊りから鉄と血へ、そして破局へ2018/01/06