中公新書<br> ミルクと日本人―近代社会の「元気の源」

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中公新書
ミルクと日本人―近代社会の「元気の源」

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  • サイズ 新書判/ページ数 274p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121024381
  • NDC分類 648.1
  • Cコード C1236

出版社内容情報

「こんな強烈な匂いと味なのに、お茶に入れて飲むなんて!」明治初期、牛乳を飲む英国人を見た日本人は胸が悪くなったという。だが築地に牧場が開設され、急速に普及する。芥川龍之介の実家も牧場を経営し、渋沢栄一はその牛乳を飲んでいた。一方で手が届かない下層市民は代わりにキャラメルを摂取していた。関東大震災や敗戦直後には、児童の栄養を案ずる人々によって学校給食が推進される。飲みものが語る日本の歴史。

内容説明

「こんな強烈な匂いと味なのに、お茶に入れて飲むなんて!」牛乳を飲む英国人を見た日本人の言葉である。だが明治二年、築地で牛乳が売り出され、日本人はその味に慣れていった。芥川龍之介の実家も牧場を経営し、渋沢栄一はそこから牛乳を取っていた。大正期には牛乳を加工したキャラメルが大流行した。関東大震災で緊急配布が行われ、敗戦後に児童の栄養を案ずる人々により学校給食への導入が進む。飲み物が語る近代史。

目次

序章 ミルクが届く朝
第1章 近代牧牛の揺籃期
第2章 渋沢栄一の牧場ビジネス
第3章 お相撲さんとミルク―栄養と衛生
第4章 ミルクのある暮らし
第5章 キャラメルの時代―食品加工業の進展
第6章 関東大震災と牛乳配給
第7章 学校とミルク―昭和期の脱脂粉乳
終章 ミルク供給の経済モデルと福祉モデル―経営問題と栄養問題

著者等紹介

武田尚子[タケダナオコ]
お茶の水女子大学文教育学部中国文学科卒業。2000年、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(社会学)。武蔵大学教授等を経て、早稲田大学人間科学学術院教授。専攻・都市社会学、地域社会学。著書『瀬戸内海離島社会の変容―「産業の時間」と「むらの時間」のコンフリクト』(御茶の水書房、2010年、第4回地域社会学会賞)、『マニラへ渡った瀬戸内漁民―移民送出母村の変容』(御茶の水書房、2002年、日本社会学会奨励賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

74
ミルクを日本人がのみ始めて約150年。面白かったのは、芥川の実家が牛乳屋さんだったこと、ミルクと文学や相撲との関係、戦前にも給食にミルクを推奨する運動があったこと。口絵の鮮やかな色刷りの広告も当時をしのばせる。食文化に興味があって読んだけれど意外な収穫があった。2017/06/28

かごむし

24
本書は明治維新以降から、終戦直後の脱脂粉乳の時代までを取り扱う。牛乳が社会に浸透し、その栄養価の高さから社会的資源として貧困層の乳幼児、あるいは学校給食などに政策的に取り入れられていく様子は、普通、歴史の光のあたらない庶民層の生活をまざまざと浮き彫りにするようで読み応えがあった。芥川龍之介の実父が、牛乳屋の大成功者であるなどのエピソードも面白いが、東京の大都会を、赤く彩った人力車が牛乳配達する様子など、近代日本の風景の中を逍遥するような読書で楽しいものであった。普段牛乳を飲まないのだが、記念に飲んでみた。2018/06/25

ようはん

19
近代日本における牛乳の受容史。江戸時代まで細々とは飲まれていたのが明治時代以降は国の方針もあって次第に普及していったのは牛肉辺りと同じかな。牛乳産業辺りの成立は大河ドラマでお馴染み渋沢栄一の功績も大きい。2021/05/29

なおみ703♪

11
明治2年文明開化とともに築地で始まった牧場経営と牛乳販売。「こんな強烈な匂いと味なのに、お茶に入れて飲むなんて!」と牛乳を飲む英国人を見た日本人の言葉だが、次第に慣れていった。栄養価も高いし値段も良いので高貴な方から、そしてまずは江戸から広がる。明治21年牛乳番付表では、東の大関が「耕牧舎」(築地入船町八丁目)。出資は渋沢栄一や、三井物産社長の益田孝。そして実務者は芥川龍之介の父だった。当初はウールビジネスもしていたが、牧場の条件に合わせてミルクへ。仙石原にも小田原にも支店(明治31または4年)があった。2020/05/26

10
長岡藩家老の家でいわゆる士族の商法として、牧場をはじめたら、恥に思った老母が自死して頓挫してしまった話などもあり、なんでも始めるのは難しいよなあと思う。「醍醐味」という言葉としてはミルクの名残はあるのに、日本は特に宗教色と結びついてたからなあ…。芥川龍之介と幼少期から彼の家に牛乳配達に来ていた方との交流や、関東大震災の後、栄養不足となった乳幼児のためミルクを配り、一緒に児童の健康相談にものる取り組みが印象的だった。そういう福祉もその後の戦争で全部ダメになっちゃう訳だけど。無念。2017/10/08

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