出版社内容情報
近代化の中で設立された七つの帝国大学。それぞれの誕生から、国立総合大学になるまでを追い、あわせて学生生活や教授の実態も描く。
内容説明
今なお大きな存在感を持つ旧七帝大。明治維新後、西欧の技術を学ぶため、一八八六年の帝国大学令により設立が始まった。本書では、各地域の事情に応じて設立・拡充される様子、帝大生の学生生活や就職先、教授たちの研究と組織の体制、予科教育の実情、太平洋戦争へ向かう中での変容などを豊富なデータに基づき活写。建学から戦後、国立総合大学に生まれ変わるまでの七〇年間を追い、エリート七大学の全貌を描く。
目次
プロローグ なぜ帝国大学か
第1部 誕生と発展
第2部 高等学校生活
第3部 学生から学士へ
第4部 教授たちの世界
第5部 終焉と転生
エピローグ 研究大学への道
著者等紹介
天野郁夫[アマノイクオ]
1936(昭和11)年、神奈川県生まれ。一橋大学経済学部・東京大学教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。名古屋大学助教授、東京大学教育学部教授、同学部長、国立大学財務・経営センター研究部長を歴任。東京大学名誉教授。専攻は教育社会学、高等教育論。著書『試験の社会史』(平凡社ライブラリー、2007年、サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
85
最近、京都大学にイベント開催で会場を借りた。以前、大阪大学でも同じイベントで使わせてもらったこともある。京大は阪大とは異なり、構内になかなか尖った看板がありそれはそれで興味深く、東京帝国大学と対抗しているのかと思って読んがそう言う「楽屋トーク」はなかった、残念。もっとも個人的な思い入れなので、特にこの本が問題があると言うことではない。戦前の学制について興味がある人にどうぞ。旧制の高等学校(高等中学校で新制大学の1・2年時に相当)の位置づけについて分かったし、京大が「三高」と呼ばれる理由も分かった。2017/06/28
あすなろ
79
一県一大学の旧帝大以外国立大学38校が出来たのはいつか?そんな質問に答えられますか?そこに至るまでの国立大学、即ち帝国大学の概要を知ってますか?という本。因みに上記38校が出来たのはS24年。帝大のなかで創立最後は名古屋大。東大、京大と創立されて行くなかで、総合大学構想は設立当初からであるが、そこに至るまでの力は相当必要であったとのこと。ありそうでないような大学史であり、いつもの如く僕の知的好奇心を満たしてくれた本だった。2017/05/28
佐島楓
60
今日の「レジャーランド」とは程遠かった大学の姿が見られる。日本の近代文学を読むうえでも参考になる。2017/06/16
かごむし
28
受験を経ずに大学に入ったので、大学事情にはとても疎いのだけど。明治維新直後の日本が、世界の最先端技術を吸収し、近代化を図るためのエリートを育てる装置である大学の誕生と苦闘など、興味深く読めた。また、少数のエリートから、大衆の時代へ移行する中で、帝国大学のあり方も変わっていったところにも着眼した著者の独創的な視点も素晴らしく、社会を背景とした教育史として、社会と教育の密接な関係について考える契機になった。この本の舞台は戦前だが、受験戦争やゆとり教育、就職問題など、歴史は繰り返していることを知り苦笑いもする。2018/02/16
trazom
15
あたかも論文のような形式で書かれているから、面白味は乏しいが、最近の新書が、ジャーナリスティックで中身のないものが多い中で、久しぶりに「新書らしい」知的な書き方の書物に出会った気がする。帝国大学の創設の経緯、朝鮮の京城帝大や台湾の台北帝大の存在、各大学での微妙な学部構成、大学予科としての高等中学校の存在、ヨーロッパの講座制とアメリカの大学院システムの模倣、戦後の大学再編とポツダム学部と呼ばれる教育学部、女子総合大学の見送りなど、日本の大学に関わる歴史がとてもよく理解できる。いい新書だ。2017/06/06