出版社内容情報
19世紀半ばの導入後写真は戦争とメディアと共に成長。敗戦後はリアリズム、広告と多彩化する。1974年までの120年を描く。
内容説明
19世紀半ば、日本へ輸入された写真。日露戦争を経て新聞・出版メディアが拡大するなか報道写真が成長。第二次世界大戦時にはプロパガンダに利用され、また敗戦直後には「マッカーサーと天皇」の写真のように、社会に大きな影響力を持つようになった。戦後は戦禍や公害問題を追及するリアリズム写真が隆盛を誇ったが、経済成長とともに私的テーマ、広告へと多彩化する。本書は1974年まで120年に及ぶ歴史を描く。
目次
第1章 メディアのなかへ―大正期~第二次世界大戦(アマチュア写真家と写壇の成立;ドイツからの衝撃;報道と宣伝―戦争の時代のなかで)
第2章 敗戦・戦後の風景―1945年~59年(焼け跡に立った写真家;報道写真の再起;写真のヌーベルヴァーグ)
第3章 高度成長と国際化の自写像―1960~74年(ナショナル・アイデンティティの再構築;原点と自立への志向;私生活の描写とアートとしての自律)
著者等紹介
鳥原学[トリハラマナブ]
1965年大阪府生まれ。近畿大学商学部卒。93年から写真弘社、写真ギャラリー「アート・グラフ」運営担当。2000年からフリーに。現在、写真評論家。日本写真芸術専門学校講師、東京ビジュアルアーツ講師も兼任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
159
幕末維新から近代までに残る写真と共に振り返る。1860年に入り有名無名の緊張した若い武士が写真に納まる。英国冒険写真家が残した貴重な横浜写真はたった100年前、風景はここまで変わるものか。守るべき稀少美、自然保護の啓蒙も写真から広がる。そして開戦。規制と検閲の報道写真へと移っていく。価値観が失われた空虚から生まれた写真家各々の道。演出か芸術か真実か。凝視して本質を鷲摑みする力漲る写真家が増えてくる。米国に染まる中で民俗学に焦点を当てた写真の史料的価値は高い。均一化する日本の先には何が。上巻はここで終わる。2023/08/12
ふろんた
20
幕末から戦後、高度成長期まで。記録として歴史を切り貼りしていた写真が、報道、芸術、広告の一端を担うようになる。2015/05/25
ハチアカデミー
14
100年以上の写真の歴史をコンパクトにまとめた一冊。ツールとしての「カメラ」の誕生とその技術の変遷から、各時代の表現手法のはやりすたり、そして個性的な作品を残したメディアと人物を紹介していく。戦前・戦中・戦後の戦争報道写真について知りたく手に取ったが、むしろその前後の歴史を読むことで、いっそう戦争報道の特殊性と普遍性をともに知ることができた。実際に写真も多く掲載されている点も読みやすい。淵上白陽や村山知義なども登場する。日本初の野性動物写真集を刊行した下村兼史など、初めて知ることが多い。2015/08/13
かりん
6
4:《時代に寄り添い、抗い、写真表現は進化する。》下巻を読んでからの上巻。カメラが日本にやってくるところから、ライカの登場などを経て高度成長まで。やはり戦争と写真の関係を一番興味深く読んだ。遺影の慣習のはじまり、逆光でシルエットを浮き上がらせた写真、民族への眼差し、報道機関の写真・ネガの焼却処分。軍の写真活用があまり計画的でなさそうなところが、日本らしいというか何というか…。また、社会と写真の倫理的・イデオロギー的な関係の難しさも見えてくる。東京オリンピックのポスターは、何度見ても秀逸である。2015/08/14
sk
3
日本写真史の標準的な教科書。無駄なく面白い記述である。もっと図版があるとよかったかな。2018/07/09