内容説明
山地が七割を占め、地震や台風にしばしば見舞われる日本。この試練の多い土地に住みついた日本人は、古来、道を通し、川筋を変え、営々と自然に働きかけてきた。私たちが見る風景は、自然と人が共に造り上げたものなのだ。本書は、まず日本の国土の地形的・社会的特徴を明らかにする。さらに大震災に見舞われ、財政危機にある今、海外に伍して豊かな国土を築き上げ、日本人が再び活力を取り戻すために何が必要かを提言する。
目次
第1章 国土はどう形成されてきたか
第2章 日本列島の自然条件―わが国土の実情1
第3章 国土の社会条件―わが国土の実情2
第4章 これまでの国土造り
第5章 これからの国土造り
終章 人の輝きを国土が支える―「人と国土」の思想
著者等紹介
大石久和[オオイシヒサカズ]
1945年、兵庫県生まれ。1970年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、建設省入省。建設省道路局長、国土交通省技監等を経て、現在、財団法人国土技術研究センター理事長。早稲田大学大学院公共経営研究科客員教授、京都大学大学院経営管理研究部特命教授、東京大学大学院情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センター顧問等を兼務。専攻・国土学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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seki
25
良書。日本の国土開発の歴史や他国との比較など分かりやすく解説されている。著者は元建設省の方。若干、否と思うところもあるが、なるほどと唸ることが多かった。例えば、道路をはじめとする公共事業のあり方。一時期というか現在も公共事業投資は悪者にされている面もあるが、山が多く可住地面積が少なかったり、災害が多いという日本列島の特徴を考えると、過去の日本の投資水準は決して高くなく、今は過小過ぎると。一方で、人口減少で国民が負担できるのも自ずから制約される。今、改めて、国土をどうすべきか考える時期かと思う。2022/08/28
さきん
16
山地が七割を占め、地震や台風にしばしば見舞われる日本。この試練の多い土地に住みついた日本人は、古来、道を通し、川筋を変え、営々と自然に働きかけてきた。私たちが見る風景は、自然と人が共に造り上げたものなのだ。本書は、まず日本の国土の地形的・社会的特徴を明らかにする。さらに大震災に見舞われ、財政危機にある今、海外に伍して豊かな国土を築き上げ、日本人が再び活力を取り戻すために何が必要かを提言する。財源確保が課題だが、それでも必要な国土開発がたくさんあることを痛感する。2016/01/24
Mealla0v0
7
国家主義というよりは伝統主義という印象。著者が明確に述べているわけではないが、国土は領土とは違うのだろう。国土とは、「血が通う」ように領土全域が「一体化」され「有機的に」ネットワーク化されている生活環境の総体、といったところだろうか。国土へのネットワーク化として著者が重視しているのは交通・交流の物理的条件、すなわち社会共通資本であるところのインフラだ。建設省出身者という点もあろうが公共事業が担う当のもの。自然条件や災害発生なども含め、これからの国土をいかにデザインしていくかが今後の課題だという。2021/08/11
サメ鯨
7
歴史的に日本は中国や欧州とは違い、外部からの侵略や虐殺の経験が少ない。そのことが非常時への対策の甘さの原因となっている。国土への働きかけは、我々の経済的な豊かさや生活の豊かさに直結するのだから、未来の日本の為にも公共事業投資をすべきだと思う。2020/09/30
カインズ
7
【いつまで公共事業はムダと叫び続けるのか】日本の国土条件を様々な観点から分析し、その効率的な利用法を唱える一冊。公共事業がムダという俗説を完全に論破し、道路や鉄道がいかに国民の利益を増進するかを丁寧に論じている。ITSや東京ユビキタスの話等、未来を感じさせる話題も含まれており、「日本はもう成長しない」といった考えが如何に愚かであるかということが良く分かる。公共施設に複合的な機能を持たせよという著者の主張にも頷ける。道路ネットワークを整備し、国土を一体として利用できるようにすることが肝要であろう。2012/02/28