中公新書<br> 外務省革新派―世界新秩序の幻影

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中公新書
外務省革新派―世界新秩序の幻影

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  • サイズ 新書判/ページ数 332p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121020598
  • NDC分類 319.1
  • Cコード C1222

内容説明

一九三八年七月、時の外相宇垣一成の私邸を八人の青年外交官が訪れ、所信を披瀝するとともに、彼らがリーダーと仰ぐ白鳥敏夫の外務次官起用を強く訴えた―ときに軍部以上の強硬論を吐き、軍部と密着して外交刷新を実現しようと行動した外務省革新派。彼らが主張した「皇道外交」は、満洲事変後の「世界史的大変動」の中で大衆に受け入れられ、世論を先導していく。戦争へ向かう時代を新たな角度で切り取る意欲作。

目次

プロローグ 八人の青年外交官
第1章 外務省革新同志会
第2章 満洲事変の衝撃
第3章 皇道外交
第4章 「人民戦線諸国」対「全体主義諸国」
第5章 現状維持派との対決
第6章 新秩序を目指して
第7章 その後の革新派
エピローグ 外務省革新派の歴史的役割

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

テイネハイランド

19
図書館本。著者は、防衛大を経て帝京大学教授。名著として名高い「失敗の本質」の共著者として知られる。この本は、戦前の外務官僚・白鳥敏夫に焦点をあてて、満州事変以降、日本がアメリカとの戦争にどのように踏み出していったかをキーとなる事件と共に追っている。大勢の人物名が出てきて初読だと人間関係を把握するのに手間取ったが、著者の説明は図表も含めて大変わかりやすく、要点を抑えているように思えて好感触。今後は、著者の別の本を読んだり、帝京大でのシラバスに載っている参考文献を読んでみたいと思った。2016/07/25

無重力蜜柑

15
革新官僚といえば国内の経済体制の合理化、統制を訴えた経済、内政系テクノクラートというイメージがある。逆に外務省は比較的リベラルな善玉イメージもあるが、中には「時代の趨勢」に呼応した革新的勢力がいた。彼ら外務省革新派は人事や機構の刷新による省内改革を掲げて首脳部を批判した。ワシントン体制や既存国際秩序の打破を謳い、アジアの解放や皇道外交といった観念的な「哲学」「世界観」を持って外交を推進することを求めた。実際の外交政策に直接的影響力はあまり持たなかったものの、国内の過激な外交世論を主導したというのが面白い。2022/08/01

MUNEKAZ

12
白鳥敏夫を中心とする所謂「外務省革新派」を紹介した一冊。陸軍と協調して三国同盟締結、対米戦へと突き進んだとされているが、実務面ではそれほど力はなく、省内の不穏分子として重要決定には関わっていなかったとする。だが英米協調を「現状維持」と批判し、独伊と連携して「世界新秩序」を訴える彼らの力強い言説は、当時の民衆から支持され、結果的に世論の圧力として外交の選択肢を狭めることとなった。下剋上の気風、国際関係の手詰まり感など時代の空気を一身に纏った集団であるという印象。ユダヤ陰謀論まで唱える白鳥は、なかなかヤバい。2021/12/14

ナン

10
再読。初読の際は「外務省革新派は外交の大衆化の申し子」というのが印象的で「政治でのブームや単純明快さには少し距離を置きたい」との感想を持ったが、今回は一組織人の目線で読み進めた。本部の方針から逸脱して物事を進めた白鳥の独善さや胆力は驚きで、それが招いた結果がわかっている現代から見れば批判の対象だが、当時は省内外で溜飲を下げた人も多くいただろうと推察される。ただ、晩年の白鳥の主張を読むと、大きな代償を払って行き着いた結論がこれなのか、との空しさを感じる。組織人として生きる自分への教訓となるかもしれない。2021/12/19

筑紫の國造

9
ここで言及される「革新派」は岸信介ら「革新官僚」とはまたちょっと違う。いわゆる「ワシントン体制」の打破を目指し、人事の停滞に対する反発を原動力とする外務省官僚の一部をさす。本書の主人公となるのは「外務省革新派」の中核である白鳥敏夫。白鳥の一見けばけばしくて派手な言動は世間の耳目を引くが、外務省のトップからは排除され、彼らを遠ざけた松岡洋右によってその路線が現実化されたのはいかにも皮肉である。しかしまた、外交が一部のエリートのものから国民外交へ転換したことにより、白鳥らの派手な言動も、影響力はあった。2021/05/31

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