内容説明
人はどこから来てどこへ行くのか？治療や瞑想の経験、仏教・神道・心理学を渉猟し時間と存在について辿り着いた境地とは？がん体験から十余年。日本と自然の風土の中で、生老病死について考えたことを、平明に深く綴った書き下ろし作品。
目次
序章 死をそばに感じて生きる（團十郎の辞世；死生観表出の時代 ほか）
１章 「知」の人の苦しみ（伝統的な宗教の後に；岸本英夫の実践 ほか）
２章 スピリチュアリティの潮流（崩れつつある二元論；オルタナティブな知 ほか）
３章 時間を考える（代々にわたり耕す；柳田国男の「先祖」 ほか）
著者等紹介
岸本葉子［キシモトヨウコ］
１９６１年鎌倉市生まれ。東京大学教養学部卒業。エッセイスト。会社勤務を経て、中国北京に留学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
50
一般的、観念的な死生観と、生存の見通しが絶望的になった時の死生観とは異なる。以前、自殺を否定していた識者と言われる人が妻の後を追って自死したと読んだことがある。何事もその立場にならなければわからない。自分が消滅することは身の毛がよだつほどおそろしい。そして、科学的に考えれば死後の世界などない。「にもかかわらず」と考える死生観を、多くの文献を引用し、癌の経験のある著者が考察する。それはスピリチュアルな考えや、荒ぶる国土を持つ日本人という特性にも及ぶ。望む答えがあったかは、その時が近くならなければわからない。2022/01/10
獺祭魚の食客@鯨鯢
13
「クリスタルなんかきらいよ」で女子大生の就職奮戦記を書いていたことは知りませんでした。「なんとなくクリスタル」の田中康夫氏はその後長野県知事に転身し、著者はガンとの闘病などを経て俳句番組にも出演するエッセイストとなっています。 二人とも有名大学出身ですが、日本の社会の変遷の縮図を体現しているようです。バブル経済と崩壊、地方分権やガン、俳句ブームなどその時々の波に乗り続けています。 先日、著者のガンに関する講演会で才色兼備の女性の波乱万丈の人生に感動し本書を読むきっかけとなりました。2018/11/16
おおにし
13
岸本さんと同年代の私も精神世界の隆盛を迎えた頃のキャンパスを体験しており、彼女同様いろいろな瞑想やセミナーに参加したものだった。しかしそのまま精神世界にどっぷりはまることはなく、「感じることを「精神世界」と結びつけるのに、それほど私は慎重だった。」という岸本さんのスタンスに近いものをずっと持ち続けて、精神世界とは一定距離を保ち続けてきた。しかし、岸本さんの方は40歳でがんを患った後、死生観を辿る思索の旅を続けてこられたことを本書で知った。遅ればせながら私も生老病死について真剣に考えていこうと思う。2015/06/13
きょ
5
文庫版で購入。著者が40才でがんになった頃のエッセイはよく読んだが、久しぶりに手に取った。死生学に興味があり、深く学んでみたいので視点が広がる。死は誰も経験談として語れない。けれど人は100％死ぬ。恐れたり畏れたり、想像したり心構えをしながら、でも何となくその日を生きてしまう。時間の流れを何人かの著書からモデル化して著者は探る。コロナ禍の中で、多くの人が生きることと、その対極の死を突きつけられた思いがしただろうが、大切な時間を過ごし、読書を通じて生や死を考えていきたい。そんなことを思わせてくれた。2020/11/03
脳疣沼
4
バカみたいな感想だが、考え過ぎの感がある。読んでいて、自分が彼女の苦悩に引き込まれそうで、なんだか恐い本である。岸本英夫の言うように、現代人は理性的で合理的な考え方をするが為に、死に対する恐怖が倍増してしまう。しかし、そうは言っても、彼女が考えるほどには考えないで自然と死ねる人は少なくないだろうと思っていて、下手をすると、せっかくそういった素晴らしい死への心構えのある人に、逆におかしな恐怖心を植え付けることになるのではないかと思うのである。この懸念は岸本英夫の本を読んだ時もあったが、本書はさらに強い。2015/11/05
