冬虫夏草

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  • サイズ B6判/ページ数 264p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784104299096
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

自然には抗わず、背筋を伸ばして生きる。ここは天に近い場所なのだ――『家守綺譚』の綿貫征四郎が鈴鹿山中で体験する心の冒険。

ここは天に近い場所なのだ――。『家守綺譚』以後を描く、心の冒険の物語。亡き友の生家の守を託されている駆け出し文士、綿貫征四郎。行方知れずになって半年余りが経つ愛犬ゴローの目撃情報に基づき、家も原稿もほっぽり出して鈴鹿山中に分け入った綿貫を瞠目させたもの。それは、自然の猛威には抗わぬが背筋を伸ばし、冬には冬を、夏には夏を生きる姿だった。人びとも、人にあらざる者たちも……。

内容説明

疏水に近い亡友の生家の守りを託されている、駆け出しもの書きの綿貫征四郎。行方知れずになって半年あまりが経つ愛犬ゴローの目撃情報に加え、イワナの夫婦者が営むという宿屋に泊まってみたい誘惑に勝てず、家も原稿もほっぽり出して分け入った秋色いや増す鈴鹿の山襞深くで、綿貫がしみじみと瞠目させられたもの。それは、自然の猛威に抗いはせぬが心の背筋はすっくと伸ばし、冬なら冬を、夏なら夏を生きぬこうとする真摯な姿だった。人びとも、人間にあらざる者たちも…。『家守綺譚』の主人公にして新米精神労働者たる綿貫征四郎が、鈴鹿山中で繰り広げる心の冒険の旅。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

694
人と自然とがかろうじて融和的な関係にあった頃、否、自然ばかりか人ならぬものや超自然までもがそこに共存していた頃のお話だ。物語は、綿貫征四郎の飄飄とした「軽み」の中に語られて行くが、そこにはまた人として生まれたことの「あはれ」が紛れ込む。ここでも、やはり人だけではないのだろう。生きとし生けるものすべての「あはれ」だろうか。かくも汎神論的な世界観が、物語全編に横溢するのだが、それはけっして観念的ではない。細やかな植物図譜と、そこに暮らす人々の営み、そして比良山系の時を経た地名とが静かな歩みを跡付けて行くのだ。2013/11/07

しんごろ

494
『家守綺譚』の続編!今回は半年くらいどこかに行っちゃった愛犬ゴローを探す旅の話!綿貫が家守も原稿もほっぽりだして、鈴鹿まで探しに行くのだから、ゴローをどれだけ好きかわかりますね!ただ、旅がメインの話ですので、高堂、隣のおかみさん、和尚といった馴染みのキャラの出番が少なかったのが、寂しかったです(>_<)だけど、水墨画のような不思議がたっぷりのこの世界は心地よく、昔、TV番組でやってた『田舎に泊まろう』を思い出します(^^)やっぱり、BGMには『家守綺譚』同様、女子十二楽坊がはまると思います(^^;)2016/11/26

へくとぱすかる

443
とにかく理屈ぬきで、今は消え去った時代の、自然や怪異との感触を文章の端々から味わうべきだろう。文士・綿貫が過ごす疎水端の家から、犬のゴローを探しに滋賀の能登川から鈴鹿山脈へと分け入るのだが、どんどん怪異と現実との区別がつかなくなる。混じっているというよりも、怪異あっての自然。友人・南川も科学者のはずなのに、この事態を不思議と思わなくなっていく。まるで冬虫夏草のように、菌と虫とが融合して一体となった姿と並行して。おそらくは民俗学の膨大な知識の上に立った作者の想像力に脱帽。そして白昼夢のような文章が美しい。2021/01/28

風眠

421
心を澄まし耳を傾ければ、サワサワと聞こえる有象無象のちいさな囁き。闇は真っ黒で、木や花にも魂が宿り、風や雨にも感情がある。生きているもの死んでいるもの妖しのもの、すべてが繋がって森羅万象となる。そう、ほんの100年とちょっと前なら、きっと誰もが自然界に対しての畏怖の念をもっていただろう。今、生きている私たちも、綿貫征四郎と繋がり、100年、いや、そのずっとずっと前から繋がっている命なのである。大好きな『家守奇譚』の続編。表紙見開き、文語体の縦長の囲み文が意味深で、読み始める前から、わくわくさせてくれた。2014/05/14

めろんラブ 

410
前作『家守綺譚』が万(よろず)の者の蠢きを内包した静の世界だとすれば、本作はその蠢きを余所で得る動の世界。タイトルの『冬虫夏草』がそのまま作品を貫く主軸をなし、出逢いに伴う交歓や愛しい伴侶に対する断ち難い想いが物語に彩を添え、趣深い逸品に。綿貫の”不可思議な出来事をあるがままに受け入れる才能”は、もはや悟りの境地。それは、徳の高い伴侶がもたらした慈雨であり、物書きとしての萌芽を促す。ふたりの関係の深化に涙。また、本作では幽玄の世界に垣間見える時代の趨勢が哀切極まりなく、私は時の移ろいを恐れた。2014/03/24

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