出版社内容情報
上役にけむたがられるようであれ。徹底して落伍者になること。つまらない仕事のときこそ、はげむこと。三島が説く、男の嗜み。
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の一句で名高い「葉隠」は、死を中核に据えた、自由と情熱の書である。三島は“わたしのただ一冊の本”と呼んで心酔した。「葉隠」の濶達な武士道精神を今日に甦らせ、乱世に生きる〈現代の武士〉たちの常住坐臥の心構えを説いたこの『葉隠入門』は、人生論であり、道徳書であり、三島自身の文学的思想的自伝でもある。「葉隠」の現代語訳を付す。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
334
三島の終生の座右の書。本書の随所に、それが顕著である。そもそも、死ぬべくして死に遅れてしまったことからくる根源的なニヒリズムがそうだ。次いで、「葉隠」が本質的に持っていた矛盾であり、またそれこそが真の特質でもある両義性がそうだ。例えば、名高いフレーズ「武士道といふは、死ぬことと見付けたり」を三島は「死と生とを楯の両面に持った生ける哲学」と解釈する。また「死狂い」を「純粋行動の爆発の姿」とするあたりは、まさに「奔馬」の勲ではないか。あるいは、恋の本義を「忍恋」とし、スパルタばりの美少年愛を称揚するのである。2015/04/08
ケイ
169
まさに葉隠入門にぴったりの本。後半の、現代語に噛み砕いて説明されているところは、わかりやすく素晴らしい。18世紀初め、藩主の後をおって死ぬことの禁じられた作者は、隠居する。10年後、52歳の時から、彼の語りは何年もかけて口述筆記された。本人は焼却を望んだが、それが残され、現代の私たちも読むことができる。原文を読もうとしたら本当に手こずるだろうから、三島には感謝だ。しかし、前半の三島の解説が、非常に分かりやすいながらも、本を読むときには、みな、自分の理解したいところを見つけて読むのだなとしみじみと思った。2017/07/17
馨
153
久々の三島由紀夫作品です。三島由紀夫が戦中・戦後も変わらず愛して止まなかった書物の葉隠を魅力をべた褒めしつつ解説されています。私が三島由紀夫のファンだからかもしれないが葉隠をとても魅力的に感じました。また三島由紀夫の美文での解説および三島由紀夫の生死に対する哲学は読んでて納得。現代にも通ずる説得力だしむしろ現代人のことではと思う位驚くような洞察力の項もありました。思っていたより読みやすくて良書でした。もっと早く読んでいればよかったらです。後半の葉隠名言抄は、忘れた頃にまた読み返したいです。2015/02/07
優希
137
人は生くるにあらず、死ぬにしてあり。武士道に死を見つめることから生まれる自由と情熱を見つめることで現代の武士道を説いているように思いました。三島が心酔するのもわかるような気がします。三島の思想が伺える人生論。難解さはありますが、これを理解することで三島の思想の真髄を見ることができるのでしょう。『葉隠』の現代語訳が付いているのも親切です。2017/01/26
ゴンゾウ@新潮部
119
平和が当たり前ではなく、右肩上がりの成長が当たり前ではなくなった今だからこそ必要な書だと思いました。誰も逃れることが出来ない「死」。死から逃れることを考えるのではなく、死を受け止めて生きることを考える。迷った時に何度でも読みかえしたい。2015/04/02