海とジイ

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  • サイズ B6判/ページ数 225p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784093865265
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

最期を見据えた生き様から光を得る人生賛歌

舞台は、美しくもありときに恐ろしい顔を見せる海と島。3人のおじいさん=ジイの生き抜く姿と,そのジイから思いを受け取る人々の心模様をときに温かくときに激しくときに静かな筆致で描ききります。全3編の物語。
〇海神?わだつみ
いじめが原因で不登校になってしまった小学四年生の優生。ある日、父の依頼で瀬戸内の島に暮らす曾祖父を訪ねることになる。死期が近いはずの曾祖父・清次は、病人とは思えないほど元気に優生らを案内し、饒舌に振る舞う。その後入院となった曾祖父と優生が交わした二人だけの約束とは……。
〇夕凪?ゆうなぎ
70代後半の老医師とそのクリニックに20年以上勤め、支え続けてきた48歳看護師の女性。ある日、クリニックを閉院すると宣言した後老医師が失踪する。必死で探す看護師の女性が行き着いたのは瀬戸内の島。もう戻らない、と告げる老医師の覚悟とは。静謐でほのかに温もる大人の慕情。
〇波光?はこう
すべてを陸上競技に捧げて生きてきたが、怪我により人生どん底になってしまった澪二。センター試験を前に逃げるように子供の頃訪れていた島にある祖父の家へ。石の博物館のリニューアルオープンの準備を手伝ううちに、今まで知り得なかった祖父の青春時代、親友、そして唯一の後悔を聞き……。


【編集担当からのおすすめ情報】
藤岡陽子さんは、おじいさんを描かせたら日本一の作家と思っております。
今から7年前、一冊の本と出合い藤岡陽子さんにお声をかけさせていただきました。とても心に残る大好きな小説です。その小説をこの度蘇らせることが出来ました。その小説のキーである「海」と「おじいさん=ジイ」をテーマに、感涙必至の短編、そしてもう一編は中編の書き下ろしで、誰にも必ず来る最期までを「生き抜く」人間の姿を描いていただきました。
三人三様のジイの生き様。ジイたちは悲しみ、悔恨を抱えながらも生き抜いてきた年月の分だけ強く、その強さを周囲の人々に分け与えてくれます。
読んでくださった方々の心に、温かな希望が灯る一冊となりました。

目次

海神 わだつみ 5
夕凪 ゆうなぎ 39
波光 はこう 139

藤岡 陽子[フジオカ ヨウコ]
著・文・その他

内容説明

漁師として生き、若くして自分の息子を海難事故で失ったジイ。末期ガンを抱えているが、ある日ひ孫の優生が訪ねてくる。優生はいじめが原因で不登校。饒舌に元気に振る舞うジイと優生が交わした、二人だけの約束とは…(『海神』)。長年開業してきた診療所を閉院する決断をした老医師のジイ。そんな彼を長年支えてきた48歳の看護師。閉院間近のある日、老医師は失踪する。看護師が探したどり着いたのは瀬戸内の島。もう戻らない、というジイの覚悟とは。(『夕凪』)。たたき上げで会社社長にまでなった後、潔く退職し島で石の博物館を営むジイ。大晦日、現実逃避でやって来た孫に、自分の半生を語り始める。それは、誰にも語ったことのない自身の青春時代、親友、そして、唯一の後悔だった…(『波光』)。

著者等紹介

藤岡陽子[フジオカヨウコ]
1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大留学。慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」で「第40回北日本文学賞」選奨。2009年、『いつまでも白い羽根』(光文社)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

378
書店で気になり読みました。現役看護師作家、藤岡 陽子、初読です。美しい海辺、島(海)と祖父(ジイ)がテーマの連作短編集、読み終わると温かい気持ちになります。オススメは『波光』です。2019/04/09

ウッディ

279
いじめで登校できなくなった小学生、足の故障で最後の駅伝に出場できず進路に悩む受験生、瀬戸内の島の祖父を訪ねた彼らにジイが残した言葉とは?長い間に多くの事を経験し、悔いもあった彼らが、将来ある子供たちに遺す言葉は、まっすぐに心の大事なところにストンと収まるような気がします。「夕凪」だけは、老医師と看護師との話で、少し雰囲気は違うけど、いずれも、ささくれだった心に穏やかで優しく染み入るような良い話でした。歳を重ねることで、身体は衰えても、心は強くなっていく、そんな人間力を自分も身に着けたいと思いました。2019/08/27

yoshida

274
瀬戸内の島を舞台に、人生で躓き悩む人々が救いを見つけ歩き出す短編集。三編の作品で構成。三人の魅力的なジイが登場します。特に「夕凪」と「波光」が印象深かったです。「夕凪」では看護師として勤務する志木と先生の日常と何気ないやり取りが、柔らかな空気間を出していました。志木にぶら下がる男への先生の言葉が静かな重みがある。「波光」では陸上で挫折した少年が祖父に会いに行き、その半生を知る。前向きに歩き出す少年の姿が清々しい。三編の短編がリンクしており、小さな繋がりを発見をするのも楽しい。暖かな読了感を得られる作品集。2019/05/19

しんたろー

268
瀬戸内海の小島を舞台にした3編の心温まる物語…『海神』不登校の少年が曽祖父から聞いた祖父の話『夕凪』高齢の医師と長年一緒に働いた看護師の話『波光』挫折した高3生が祖父から聞かされる昔話…どれも藤岡さんらしい温かみある文章でシミジミと響いてくる。特に『波光』で描かれている友情は忘れていた何かを思い出させてくれるようで胸が熱くなった。「人生は短いぞ。今日一日を限界まで生きろ」という台詞が説教臭くなく感じるのは、愚直だけど誠実に生き抜いたジイの言葉だからだろう。そんな事を胸を張って言えるジイに私もなりたい。2019/06/06

kanegon69@凍結中

249
この本の3つの話にでてくる3人の老人、あぁ、本当に素敵な老い方だなと思いました。どんなに頑張ってもきっと後悔のない人生なんてないんだと思います。人生生きていれば、苦しいことだらけ。でもこうやって人生の最期を過ごす時、去来する思いに素直になって生きぬけるというのは幸せなことだなと思います。私もそんな最期がいいなぁと思わせてくれました。3話とも素敵だったのですあ、最終話の「波光」が、全部を総括しているような感じがして、胸の中がとても熱くなり、気が付いたらじんわりと泣いていました。本当に温かい物語でお薦めです。2019/08/13

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