出版社内容情報
日本を代表する思想史家・姜尚中が列島を縦断し、近代化の栄光とその影の面とを凝視した「思索の旅」の記録。2018年、明治維新後150年となる節目に”近代日本とは何だったのか”を問う、渾身の論考。
内容説明
明治国家とは何だったのか?軍艦島、三池炭鉱、水俣、福島第一原発―日本列島を縦断し“消えゆく記憶”と共振した、稀有なる思想史の誕生!
目次
エネルギーは国家なり
貧困と格差の源流
人づくりの軌跡
天災という宿命
崖っぷちの農
選良たちの系譜
動脈の槌音
近代の奈落
宴の決算
差別という病
消えぬ記憶
財閥というキメラ
「在日」―変わりゆく国家のしずく
辺境的なるもの
著者等紹介
姜尚中[カンサンジュン]
1950年生まれ。政治学者。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
57
「炭坑節」に2番があった。それも女性の炭鉱婦(?)の心情を歌ったものだった。江戸時代から近代に切り替わる激動の「維新の影」を追って、様々な全国の現場に訪ねた意欲作。しかし、せっかくその場に行っているのに当事者に一番聞きたいことが聞けてない、きらいが…。2018/06/28
aloha0307
18
今年は明治維新から150年の年 政府の積極的広報活動(大河 西郷どん もその影響?)の趣旨は、明治の精神に学び、未来も過去の延長線と。いっぽう 姜さんは「正史」は横にのけて、そこから排除された人たちの目線で近代を捉えるために全国を行脚する。日のあたあるところには必ず影が~中心の輝きに暗黒を見出したのがあの漱石でした。その心情の一端:「何処を見渡したって、日本には輝いている断面は一寸四方も無いち”ゃないか!」には肯けるものが確かにありました。2018/04/28
futomi
8
明治維新から150年。和魂洋才でひたすら富国に突き進んで来たこの国の、その周辺のそれでもこの国の一部である歴史、出来事を追う。183ページ「国家とは正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体」2018/04/28
がんぞ
4
序章云う。明治以降の日本の発展は“和魂洋才”であった。維新150年のイベントは“ネーションの善性”のオプティミズム、愛国心には「人類史的な悲劇、広島長崎の原爆、水俣等の未曾有の公害、原発事故という黙示録的悲劇」目配りがないと。4章【天災という宿命】熊本地震さかのぼって阪神大震災を「戦争に匹敵する問いかけ」として「歪な配分が地域の消耗を招き、地域や市民の活力を削ぎ、ひいては日本全体の『地域力』の減退をもたらしている」と「増え続ける防衛費や原発事故処理も未完で東京五輪開催」否定的/言葉が上滑りして軽薄な偽学者2018/07/08
Mealla0v0
4
近代日本の「影」が凝集した場所を歩き感じたことを綴ったルポ&エッセー。姜尚中は、その影に生きた「裸形の民」(棄民)を見つめ、明治以来の問題として、この裸形の民が「人柱」として、その生命を燃料に近代化してきたことを指摘する。坑夫を扱った第1章はなかなか衝撃的。近代を輝かせたエネルギーは、その原材料となる石炭の採掘に従事した生身の人間達は、最下層の存在だった。軍艦島はその建築によって人間が階層化されていたのだと言う。そして、この章は通奏低音となって、本書の事例を問題として提示するのである。暗いが読みやすい。2018/02/10