出版社内容情報
高齢化する日本。救命救急センターの現場にもその影響は大きい。孤独死、無理心中、老親への家庭内暴力……最先端の医療現場から社会を見据える、リアルなヒューマンドキュメント。(解説/上野千鶴子)
内容説明
東京下町の救命救急センター。突発・不測に発症した外傷や疾病の患者を収容、適切な治療を施し救命するのはもちろん、元の健康状態に回復させ、社会復帰を目指す救急医療が行われている。無理心中、虐待、老親へのDVなど、様々な事情の患者を救うべく、最善を尽くす医師達。その現場から超高齢化社会の日本の現実が浮き彫りに…。長く生死の境を見てきた現役医師が描く、命を巡るシビアな人間ドラマ。
目次
孤独死
刺創
リピーター
同意書
錯乱
虐待
蘇生術
レセプト
越境
終末期
著者等紹介
浜辺祐一[ハマベユウイチ]
1957年兵庫県生まれ。81年東京大学医学部卒業。東大病院救急部を経て国立水戸病院外科に勤務。85年救命救急センター開設と同時に、都立墨東病院へ。救命救急センター部長。99年、『救命センターからの手紙』で第47回日本エッセイスト・クラブ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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菜穂子
61
若くして突然、心肺停止の状態で救急搬送され、医師から『蘇生したとしても胃瘻を入れ恐らく10年以上意識がない状態で過ごすことになることが予想されます。どうされますか?』と問われた70歳の母は『なんとか一言でも声が聞きたい』と答えたそうですが治療の甲斐もなく、娘さんは帰らぬ人に。昨日打ち明けられた話です。対処が早ければ助かったのか?どうして?の思いから立ち直れず涙にくれる母親でした。助かる命、助からない命、終末の迎え方、救命センターの疲弊、救急隊の苦悩と葛藤などなど、今作も考えさせられることばかりでした。2018/08/05
カブ
51
幸いにも今までお世話になったことのない救急救命センターの現場で実際に起こっていることを、現役医師が綴ったエッセイ。孤独死や、虐待、高齢化など他人事とは思えない。命と隣合わせの尊い仕事の現実を見た。2018/03/02
のんちゃん
43
本書のカバー見開きの著者のお写真を見た時、どこかでお会いした感じがしたが、まさに10年以上前、母を救急車で搬送して頂いた時、救命センターの前で待っていて下さった先生だった!本書は救急救命医療に携わる医療者の日々の報告が小説仕立てのようになっており、読み易く、救急救命の事はもちろん、困った患者や救急車事情、医療費等あらゆる医療に関する事が素人にもよく分かる仕立てになっている。あの病院の中でこんなにも色々とドラマがあると思うと前を通る時、これからますます感慨深いことになるだろう。2018/03/14
のんすけ
32
タイトル買い。現役医師による救急救命の現場のリアル。救急とは、延命とは、と考えさせられるテーマがいっぱい。特に身につまされたのが軽症で救急車を呼ぶことによるリスク。少し前までまさにその消防署に勤務していたため、救急救命士たちのジレンマや優しさがよくわかるだけに、本当に必要な人に届く行政サービスをするためには、簡単に救急車を呼ばないでほしいという訴えがわかる。ただ、不安で呼ぶ人の気持ちもわかるだけに答えが簡単には出せない。また、著者が医師のため、描写がリアル過ぎて時々読み進めるのが辛くなった。良書。2019/05/02
ナリ
29
久しぶりの浜辺先生。 相変わらず吸引力に一気読みな一冊です。TVドラマなどの映像より、救急救命センターの臨場感があると思います。2018/01/22