出版社内容情報
男がこよなく愛する海、車、酒、そして女。人生で受けてきた疵、残酷な時の流れ……。著者を思わせる「壮年の作家」を主人公に、男のロマンに満ち溢れた伝説の短編集。(解説/吉田伸子)
内容説明
男はどこに向かおうとしているのだろう。船に乗る。相棒は酒と葉巻。気の向くままに舵を取り、気の向くままに女を抱く―。コースアゲイン、進路を戻せ。人生もだいぶ先に来てしまった。自分の生き方はわかっている。変えられないもの、失ったもの。残酷な時の流れは女を泣かせ、それは、男の心に深く刻まれ疵をつくる。壮年の作家を主人公に、男のロマンに満ち溢れた伝説の短編集。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年唐津生まれ。中央大学法学部卒業。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞を、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長編部門を、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞を受賞。また、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞を、06年『水滸伝』(全19巻)で第9回司馬遼太郎賞を、07年『独り群せず』で第1回舟橋聖一文学賞を受賞。10年に第13回日本ミステリー文学大賞を、11年『楊令伝』で第65回毎日出版文化賞特別賞を受賞し、13年に紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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禅
1
「ハンカチ、いつも麻なのよね」 「あ、まあそうだ」 「唾を吸うと、硬くなるの。そういう感じが好きだったわ」 (『三年後』より) え っ っ っ ろ い …!! 比喩をほぼ用いない文体でありながらも、脳裏には鮮やかにシーンが浮かぶ。無駄のないキレッキレのセリフたち。 「自分の命を、食い荒らす。そんな自虐的な気分が、どこかに漂っている」 「言葉と同じね。使う人間が錆びついていれば、それは錆びついているってこと」 あ、ハンカチをどう使用したのかはぜひ本編でお確かめください。2021/04/30
ma-no
1
北方先生ご本人を思わせる作家の酒池肉林の日常をスケッチした掌篇連作です。若い愛人を何人も侍らせ、生意気な小僧をとっちめる、昭和の男のドリーム小説……磨き上げられた文章はさすがです2019/08/07