出版社内容情報
万病に効くお灸を行商する男。山奥の村を訪れた彼を待っていたのは? 人生のおかしさ、哀しさを描く著者の真骨頂。芥川賞候補作。亡き父の後を継ぎ、万病に効くお灸「天祐子霊草麻王」を行商する「わたし」は、父の残した顧客名簿を頼りに日本海沿いの村を訪れる。土地の老人達、雑貨店のホットパンツの女、修験道者姿の謎の男……。人里離れた村で出会う人々は一癖も二癖もありそうな人たちばかり。やがて、帰りのバスに乗り遅れた「わたし」は、この村で一泊することになるのだが……。
どろにやいと
天秤皿のヘビ
戌井 昭人[イヌイ アキト]
著・文・その他
内容説明
ひとたび足を踏み入れれば、もうそこから出られない。ここは魔境か?桃源郷か?亡き父の後を継ぎ、万病に効くお灸「天祐子霊草麻王」を行商する「わたし」は、父の残した顧客名簿を頼りに日本海側の村を訪れる。善良な老人達が暮らす素朴な山里かと思いきや、なにやらわけありの人たちもちらほら。やがて、帰りのバスに乗り遅れた「わたし」は、この村で一泊することになるのだが…。
著者等紹介
戌井昭人[イヌイアキト]
1971年、東京生まれ。玉川大学文学部芸術学科演劇専攻卒。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を主宰し、台本、出演ほか担当。2014年、「すっぽん心中」で第40回川端康成文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
100
☆5.0 第151回芥川賞候補作『どろにやいと』 万病に効くというお灸を行商するわたしは 父の残した顧客名簿を頼りにある村を訪れた。 ひとたび足を踏み入れたその村から わたしは出ることが出来ない。 ここは魔境か?桃源郷か? 飄々とした語りが魅力の、すっとぼけた物語。 2021/02/20
中玉ケビン砂糖
75
、そろそろ前回の芥川賞候補作たちが単行本化されるかな、と思って改めて読む、と意気込んだがどうにも気が進まない、この本を買うくらいなら、他の候補作で、まだ読んでいない併録された作品をチェックしたいかな、と思う程度、土俗的な雰囲気で、胡散臭い行商人、排他的な村落共同体、突如としてあらわれる暴力、そういう要素をきれいにまとめてハイどうぞ、といった感じ、賞をあげるには小品過ぎるし、ちょっと守りに入ってるのかな? という印象は払拭できず、というか他にモノスゴイのがいたしね、、、2015/02/03
なゆ
70
なんというか、ヘンな夢にちょっとうなされつつ目覚めたような気分。お灸の行商だなんて、ちょっと昔の話のようで実は現代の話だし。すごく山奥の村を訪れ、ちょっと変わった村人たちと関わるうちに気がつくと村の中に閉じ込められたように。時々は幻覚みたいのも見えたり、なんかよくわからない不思議な世界。「天秤皿のヘビ」も、ええええ~そんなぁ~なもの悲しさが漂っていて、でも淡々としてるところが何とも言えない可笑しみだったりもする。2017/04/07
あじ
65
不可抗力が働き行動を阻害される事が一度はあっても、二度三度重なると疑うものだ。町から出ようと思えば、なぜか行きつ戻りつ出られない。形容するなら釈迦の掌を飛び回る、孫悟空にでもなったような心地か。誰かが彼にお灸をすえようと、企んでいるように思えてならない。彼の父はかつてこの町を訪れたという。その父はすんなり下山出来たのだろうか。表題作他一篇収録。第151回芥川賞候補作。2014/09/23
いたろう
48
お灸の行商人の「わたし」が遭遇する山奥の村でのできごと。淡々として、それでいてユーモラスな味わい。2014年上半期の芥川賞候補5作品を読み終えたが、最後に読んだ本作が一番面白かった。受賞作の柴崎友香「春の庭」よりも。残念なのは、話として短いこと。長くなると、芥川賞の候補にならなくなるのでは、というのはあるかもしれないが、これはしっかり長編で読みたい作品。そして、併録の短編「天秤皿のヘビ」も短いながら印象深く。今回、戌井氏の著作は初読みだったが、他も読んでみたいと思った。2014/11/30