出版社内容情報
人間存在のままならなさを静かに深く掘り下げた、サスペンスフルな戦争小説北ビルマでの米支軍との戦いは、退路を断たれ、苦戦を余儀なくされた。独歩患者は中隊から切り離され、経験のとぼしい見習士官を付けられて分進隊として転進する羽目に陥る。イラワジ河をにわかづくりの筏で下る際、敵機に襲われ、すさまじい火力で河面が叩かれる。各自中州までようよう泳ぎ着くが、そのさなか、伍長が胸の一突きで殺される。あの極限状態のさなかで、いったい誰が? 大河の両岸には百姓ゲリラが控え、中州からの脱出もままならない。籠城はできても3日。日本兵たちはやがて、一人、またひとりと命を落とす――。
中州を脱出してひとり安全圏の渡河点にたどりついた兵隊から転進の行程を聞いた下士官は、話に違和感を覚え、兵隊に銃をつきつける。「お前、足手まといになった連れをひとり残らず殺して転進して来ただろう」――転進の道で鬼とならざるを得なかった人間の弱さ、優しさ、哀しさ。人間存在のままならなさを静かに深く掘り下げた、サスペンスフルな戦争小説!
古処 誠二[コドコロ セイジ]
著・文・その他
内容説明
退路を断たれた北ビルマでの戦いで、独歩患者は分進隊として切り離される。経験のとぼしい見習士官を付けられての転進中、イラワジ河で敵機に襲われ、九死に一生を得た森川上等兵。死に物狂いで泳ぎ着いた中州に漂着してきたのは、伍長の刺突遺体だった。自決か、他殺か―。腹を探り合う兵隊たちは、ゲリラに包囲された中州で籠城を余儀なくされ、ひとり、またひとりと命を落とす。息もできない閉塞感とサスペンスフルな展開。どうしようもなく感情を揺さぶられる驚天動地の戦場ミステリ!
著者等紹介
古処誠二[コドコロセイジ]
1970年、福岡県生まれ。高校卒業後、様々な職業を経て、航空自衛隊入隊。2000年4月『UNKNOWN』で第14回メフィスト賞を受賞し小説家デビュー。資料精査の果てに、従来の戦記文学を超越し、戦争体験者には書けない物語の領域を切り拓き続ける。10年、『線』をはじめとする一連の執筆活動に対して、第3回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を授けられる。『いくさの底』で毎日出版文化賞と日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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