出版社内容情報
正義を貫く武士の覚悟が胸を打つ、傑作時代長編!藩のため、妻のため、男は荊の道を歩み出す――。
生きるとは?正しさとは?
不正を許さぬ武士の覚悟が胸を震わす、葉室文学の真骨頂!
城下の「お狐火事」をきっかけに、扇野藩の財政は破綻の危機に瀕した。
中老に登用された檜弥八郎は藩政改革に着手するが、改革は領民の生活を圧迫、人々は「黒縄地獄」と呼んで弥八郎を嫌った。
そんな折に弥八郎は収賄の疑いで糾弾され切腹、改革は三年でとん挫する。
弥八郎の娘・那美は、親類の中で最も貧しい、遠縁の矢吹主馬に預けられた。
――その数年後。
弥八郎の嫡男、慶之助は、代替わりした新藩主の側近として国入りを果たす。
父・弥八郎の改革に批判的だった慶之助は、自らの考える藩政改革に意欲を燃やし、藩札の発行など、新しい政策を提案する。
警戒する家老らは、主馬を呼び出し、那美を妻とせよと命じた。
主馬に檜家の家督を継がせることで、慶之助を排除しようとしたのだ。
だが主馬は、弥八郎からある密命を受けており――。
「政を行うということは、いつでも腹を切る覚悟ができているということだ。そうでなければ何もできぬ」
正義を貫く武士の覚悟が胸を打つ、傑作時代長編。
映画化で話題沸騰の『散り椿』に連なる、扇野藩シリーズ!
葉室 麟[ハムロ リン]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
180
「生きていくことは、自分が誰かから傷つけられているだけでなく、誰かを傷つけていることなのかもしれない。だとしたら、ひとにできることは罪滅ぼしだけ。生涯、誰かのためになにかをする道があるのなら、そのことをしなければならない。」何処かの偉い人や自分自身に問いたい言葉を、扇野藩を立て直すため私怨のために切腹させられた父を持つ娘・那美に云わせる葉室作家が良い。その夫となる主馬や兄・慶之助が民と藩の為、粉骨砕身する物語。いつも飢饉や飢餓で苦しむのは弱き者なのだ。葉室作家逝っても作品で会えるのが嬉しい。2018/06/30
starbro
170
葉室 麟は、新作をコンスタントに読んでいた作家です。逝去後も新作が続いています。本作は、久々の扇野藩シリーズ、ハードボイルド時代小説でした。8、9月とまた新作が出版されますが、何時まで新作が読めるのでしょうか?2018/08/02
初美マリン
83
作者らしく、想像通りですが、最後は涙します。人は外からは、わからないと。2018/11/10
優希
61
面白かったです。いわゆる武家ものですが、斬り合う仇討ちではないのが好みでした。最後も清々しく感じました。2021/04/07
それいゆ
52
最後はホッと胸をなでおろすいつものパターンでしたが、高評価の部類に属する秀作でした。9月28日に映画「散り椿」が公開されますが、この作品も映画化に値する出来栄えでした。2018/07/25