内容説明
絶頂期にあった大英帝国の「富強」の所以は何なのか。条約改正交渉が進展しないまま、岩倉ら一行は旺盛な好寄の眼を光らせ、イギリス各地を見学していた。一方サトウは、明治四年暮れの富士を眺める甲州路の旅以来、日光への旅、西国巡遊と、旅続きの私生活を送る。大佛次郎賞受賞の大河ヒストリー。
目次
余話
留守政府
岩倉使節団
西国巡遊
著者等紹介
萩原延壽[ハギワラノブトシ]
1926年、東京・浅草に生まれる。東京大学法学部政治学科卒業。同大学院修了後、ペンシルヴァニア大学、オックスフォード大学へ留学。帰国後は、研究・著述に専念する。2001年10月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
49
余話というところで、サトウが日本人女性と結婚したことなどを書かれています。中心は岩倉使節団がアメリカからイギリスへと向かい、イギリス各地を見学していました。この経験がやはりその後の日本の方向を決めた気がします。サトウは西国巡遊ということで関西から瀬戸内海沿岸最後は長崎までということで日本の西国を見て回っています。2015/05/30
ホークス
38
英国外交官アーネスト・サトウの評伝。第9巻は、1年半を超える岩倉使節団の各国訪問から始まる。長引いたのは、この機に日本が条約改正を進めようとしたため。米国と英国で激しい抵抗に遭い交渉は不調に終わったが、外交を学ぶ機会にはなった。岩倉、木戸、大久保ら、首脳陣が一緒に行ったのも良かったようだ。外向きの事を誰かに丸投げすると内向きに固まってしまう、日本人の悪弊を避けられたと思う。この間、国内では守旧派の不満が蓄積しつつあった。サトウは29才で、日本各地を旅している。治安が改善し、日本語もできるため困る事は無い。2022/04/09
huchang
4
途上国が近代化を進める過程で、自国の文化を捨て去った?というくらいに立ち位置が急速に変化することがある。このあたりの巻は、日本にもそんな時代があったことが分かる内容。今はそれほど露骨じゃないけど、大英博物館なんて「歴史的遺物の保存は現地人にはむーりー」とばかりに収奪してったのを飾ってるわけだからねぇ。ナチュラルに傲慢なサトウくんたち西欧諸国の立ち位置やなんかが今後どう変化するのかは見もの。日本はその後、決定的に道を誤るわけだが、その前に何があったのかという目線で読んでたら、電車また乗り越しそうになった。2021/10/07