出版社内容情報
ラ抜きことば,「うざい」「チョー」などの新表現,鼻濁音の消失,等々.一見ことばの乱れとされる現象の背後に働く言語体系のメカニズムや日本語史の大きな流れを解き明かす.長年の調査にもとづく現代日本語の動向観察.
内容説明
「見れる」「食べれる」のようなラ抜き、「ちがかった」「うざい」「チョー」といった新表現、鼻濁音なしの発音…。日本語が乱れてる!とさわぐのはまだ早い。言語学の眼で考察すると、耳新しいことばの出現の背後ではたらくメカニズムや日本語変化の大きな流れが見えてくる。長年の調査・探究に裏打ちされた現代日本語の動向観察。
目次
1 ラ抜きことばの背景
2 「じゃん」の来た道
3 簡略化の動き
4 東京ことばの底流
5 新しい方言の広がり
6 敬語の最前線
7 気になる?口調
8 ことばの変化のとらえ方
著者等紹介
井上史雄[イノウエフミオ]
1942年山形県に生まれる。1971年東京大学大学院言語学博士課程修了。専攻は社会言語学・方言学。現在、東京外国語大学教授
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
57
「うざい」「ちげー」など、新しい方言・表現をめぐって、東京から地方へという言葉の流れがある一方、地方から東京へ(そして再び大規模に全国へ)という広がり方があることを明らかにする。伝統的な方言は滅びたと言われたが、言葉の変化・地方独特の表現は生まれては広がっている。同じ東京でも、地域差・社会集団によって言葉がちがう現象の発見は、方言学の深まりを表しているのでは? 発行から20年あまりの間に、著者の予想が当たった例が多く、ことばの将来像も描けそうだ。今の「平板アクセント」の広がりなど、恐いほどそのままである。2020/08/31
Fondsaule
20
★★★★★ 「ラ抜きことばは千年にも及ぶ日本語動詞の簡略化の一部だ」という。 どのようなメカニズムで発生して、広がっていったのかの研究・調査は大変興味深い。 「うざい」「やっぱし」「行かんかった」等、取り上げている事例も中々おもしろい。2019/05/05
よしひろ
9
言葉は生きており、日々変化している。敬語、方便、若者ことばなど、様々な言語の側面を具体的に見ていく。2016/05/03
makio37
6
「ラ抜き」言葉などの変化はテレビの影響による「乱れ」ではなく、昔から絶えずつづく長期的な「統合と分岐」「省力化」の動きの一部であると再認識した。特に本書は地域別・年代別データを用い、変化が地方から東京へ逆流している事実を明らかにする。自分も無意識に使ってしまう「じゃん」の語源が「では+ない+か」とは面白いし、所属集団の専門用語のアクセントを平板化する傾向というのも肯ける。言葉の変化に対する感度が上がった一方で、子どもたちの言葉づかいには前より少し寛容になれた気がする。2017/05/26
ゆり姐
4
言葉の変化には、それなりの理由があるのです。 「言葉の乱れ??」「若者言葉??」いえいえ、日本語を母語として使い、操っているものたちにとって、必ずそこに理由があるのです。