内容説明
すべての地域に文化の自己決定能力を。社会に重層性と活力を生み出すための拠点を構想する実践的文化論。
目次
第1章 芸術そのものの役割
第2章 コミュニティの維持、再生のための芸術の役割
第3章 新しい広場を作る―文化による社会包摂
第4章 文化の自己決定能力
第5章 憲法について
第6章 社会における劇場の役割
第7章 劇場法と、その先へ
第8章 stateになるために
著者等紹介
平田オリザ[ヒラタオリザ]
1962年生まれ。劇作家、演出家。劇団「青年団」主宰。1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞。2002年日韓国民交流記念事業『その河をこえて、五月』で第2回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。現在、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授、東京藝術大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
12
著者は「一人ひとりの市民が、芸術家としての感性を持たない限り、東北の真の復興はなしえないと信じている」(ⅵ頁)。芸術の力で復興を果たす発想は説得力がある。生きる希望を見出せるからである。不登校になってしまう女子東大生もいるとのこと(30頁)。もしいれば、わたくしの読書会にご参加を(苦笑)。金沢21世紀美術館は成功しているようだ(80頁~)。新幹線が長野市から伸びれば行こうかな。著者の「文化の自己決定能力」とは今後の地方自立・自律の課題(100頁)。グローバル人材よりも地域貢献人材が先(106頁)は同感だ。2013/12/21
なおみ703♪
9
読むのは実はまだこれから。2月1日「まちづくりと地域の文化芸術」というテーマで平田氏の講演を聞き、この本の内容と関連していると思い記録。昔は、床屋、銭湯、駄菓子屋等が無意識のセイフティネットになっていたが、市場の原理により、それが消えつつある。地方ほど様々なメニューを用意し、若者の居場所と出番を人為的に作る必要がある。今後必要なのは、「誰かが誰かを知っている緩やかなネットワーク社会」であり、その接点として芸術が必要。また、文化の格差が地方と都市で拡大し、就職にも影響(センスのいい都市の奴が勝つ)している。2015/02/11
すみけん
8
読むのに時間がかかったが、劇場法が制定されたことや日本の劇場のシステムなど知らなかったことが多く、自分自身が文化活動に疎いことを自覚させられた。最終章の「stateになるために」の「モノは人を幸せにしない」にはうなづくばかりであった。日本における文化が開き、世界に発信することにより、日本の立つべき位置がみえてくるのではないかなあ。2015/06/18
鳩羽
8
「芸術」は役に立たないものではない、社会の問題のたとえばこんな風に役に立つ、なので公的支援が必要だということをまとめた本。特にコミュニティの維持や再生、行き場のない弱者の社会的包摂の効用に注目しており、物理的な場所としての「広場」と、ほどほどの緩い繋がりの「公共」に、ワークショップやボランティアといった「何かをさせること」の成功例をあげる。2014/01/27
Gatsby
6
教育に関わる人間としては、すでに東大においても首都圏の(特に先進的な教育を行っている)高校出身者と、地方の高校出身者の間に「地域格差」が生じていることは、衝撃であった。文化とか文学とかがどれほど私たちの生活に影響を持っているのかということについては、恥ずかしながら平田氏の書物を読むたびに再認識させられる。世に「コミュニケーション能力」という言葉は溢れているが、先の『わかりあえないことから』でもそうであったように、それが具体的に意味することと、それを基にした今後のありうべき社会の姿が示される本である。2013/12/23