内容説明
文を超えたテクストのレベルにおける《文法》の探究の最初の試みとして、民話・神話・物語等の記号論的研究において、今や、構造言語学におけるソシュール『講義』にも比すべき位置をもつ記号学の第1の古典。
目次
第1部 方法と一般的結論(問題の歴史;方法と資料;登場人物の機能;昔話の若干の他の要素;登場人物への機能の割り振り;新たな人物を出来事の展開のうちに導入する仕方;登場人物の属性と属性の意義;纒りのある全体としての昔話)
第2部 分析の実例(八つの類型;〔45話の〕図式と註釈)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
26
徹底的に類型を示すことに終始していて、データベース的なのはロシア的のなでしょうか。資料的な価値はありますが、大塚英志の解説書で十分理解できます。他方で、現代思想と異なる文脈で突き詰められた先駆性に驚くばかりです。神話の構造に普遍性があるということを、人間の認識に同じ型があると考えるか、超越的な存在があると考えるかという視点は興味深いです。無論、大半は前者ですが、ごく稀に後者に振れるところが人間の分からないところです。データベースとしてこういうこともAIで克服できるか、さらに人文学として考えたい論点です。2018/08/26
roughfractus02
8
形態学は類似性から出発するが類似性を見つめるためにはデータベースが必要である。著者は100の昔話を行為の類似と捉えて定項と呼び(生まれる、禁ずる等の動詞)、31の物語機能に整理した。また、これら機能の様々な実現の仕方を可変項と呼び(主人公や目的等の主語、目的語、修飾語、補語で表される違い)、物語をバージョン化する機能の器とした。昔話の機能の数は少なく、物語の継起も一定であることがわかれば、現代の物語の語り方にも同様の形態が見いだせる。情報の制御が問題となる1920年代の旧ソ連に本書が出てきた点が興味深い。2020/04/26
サトゥルヌスを喰らう吾輩
7
形式主義に関心があって読みました。古くてぶ厚い本特有の読んでも読んでも進まなさで途中不安になりましたが、ロシア民話におけるバーバ・ヤガーの汎用性の高さが骨身に染みわたった思い出深い一冊になりそう。鳥の足が生えた家に住んでいる魔法使いのお婆さんというイメージの原型はどうやらこれらしいとわかったのが収穫でした。気合いで読み切った感じですがしばらくイワンとバーバ・ヤガーが潜在意識に棲みつきそうです。2019/12/20
兎乃
5
文章展開の法則性研究/形態学的分析/登場人物の機能/文章が記号という楽譜に置き換えることを可能とする、その一歩手前で踏みとどまるお行儀の良さが微笑ましい/ロシア民話が矢鱈におもしろい。2013/04/18
象
4
村や社会が、子どもに期待することを、物語の形にして託していた・またはある社会が子どもに求める期待が物語の形の中に反映されている、と考えたとき、魔法昔話は、子どもへのイニシエーションへの動機付けが意図されていた、と言えるかもしれない。 // 現代社会が社会の維持と更新のために、社会の成員に何を期待しているか、から逆算して、現代社会の物語形態を考えることができるかもしれない。(つまり、人々が社会から受ける期待、そのストレスとその解消を物語の形にする)2019/01/14