内容説明
日常性に依拠し、哲学の諸前提を覆してきた著者が、時間と自我という根源問題に挑む。「アキレスと亀の逆説」「他我問題」を解消し、過去世界の実在をも疑わしめる臨界へと至る、澄明な思考の軌跡。
目次
時間の変造
過去の制作
観測者は邪魔者?
刹那仮説とアキレス及び観測問題
言語的制作としての過去と夢
過去概念の改訂
自我と時間の双生
ホーリズムと他我問題
理論概念としての自我と他我
「他我」の意味制作
鏡の中の左右
風情と感情
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
5
線型時間と他我の否定。大森哲学のエッセンスが詰まった小論集。2021/12/08
長島啓介
2
想起された過去形の文章は、過去経験の言語的表現ではなく想起そのものである。言語以前の過去経験は、不定形であり、言葉によって、過去形の経験という過去の知覚経験とは違う新しいものが制作される。この制作がなければ、過去の知覚経験は全くの無の状態と言える。知覚経験は、今最中の経験であり、過去形の経験は、かくかくの知覚であり、行動であったという想起そのものをさす。したがって、過去とは、経験の以前以後の順序配列を示す時間軸上の問題ではなく、過去形の言葉によってはじめて存在するものである。2013/10/26
tabiuta
2
現在とは知覚(感じ考えること)、過去とは想起(思い出すこと)によって起こる。 思い出されたイメージは、あくまでも「今」浮かんだイメージであって、たった「今」作りだした(現在感じている)、ただの想像でしかないのだと。 過去とは「過去性」という概念、つまり過去形のコトバ(動詞)のみによって確立されるものなのだ。という指摘は、私には無かった視点だ。 他にも色々発見があったが割愛。 随所にクスッと来る表現がある・・・それはまぁいいか。2013/03/24
YASU
1
常識的な線形時間を否定しつつ,大森は,あるのは今現在であり,過去とは想起であるという.同様に自我概念もまた,今現在の動作経験から双生的に発するのだと.過去が「制作」されるのと同様,他者(他我)もまた制作される.「意味」を込めて制作されるのだと.2021/05/03
rubix56
1
さわりだけ2014/12/19