出版社内容情報
外国人居住者問題に取り組む〈実践者〉のナマの声を発信!オリンピックに向け、いま必要とされる具体的な「行動」と「政策」を示す。▼一国主義に未来はない
▼多文化が進む日本と日本人
「日本人」と聞いて、みなさんは、どんな人を思い浮かべますか?
いま注目されているのは、「日本人の多文化」です。日本国籍取得者の増加だけでなく、海外で育った日本人や国際結婚で生まれた子どもも成長し、多言語・多文化家族が増えています。
「義務教育機会確保法」制定をはじめ法制度改革も動き出し、国や自治体、企業、市民セクター、医療機関、教育機関の連携が進んでいます。
多様なルーツをもつ住民同士が互いに支え合い、安全で豊かな社会を創る……そんな「多文化社会のセカンド・ステージ」が始まろうとしています。
▼ケアの実践こそが、平和な暮らしを守る
外国人住民の受け入れ拡大や東京オリンピック・パラリンピックの開催などを契機に、日本でも多様なルーツをもつ人々がさらに増え、私たちの身近なパートナーになるでしょう。
一方、こうした変化に対し、テロや犯罪の増加を心配する声もあります。しかし、教育・住居・就業・医療などライフサイクルを通じた<共創>こそが、社会的リスクを回避するカギを握っています。いま、日本に必要なのは、多文化化のリスクを熟知し、「共創」の果実を社会に届けられる「いのちのケア」の「実践者」たちなのです。
ぜひ、皆さんも本書に登場する「実践者」たちの「現場」からの声に耳を傾けてください。
<b>序 章 いのちを守りたい! / 川村 千鶴子</b>
<b>第?部 越境のすすめ</b>
<b>第1章 グローバル市民として生きる / チョウ チョウ ソー</b>
はじめに
1 本屋さんが憩いの場
2 建築現場で働く
3 レストランの起業
4 ジャーナリストとして
5 教育に目を向ける
おわりに
<b>第2章 僕がパリの外国人だったころ / 増田 隆一</b>
はじめに ―― 異国で暮らす
1 パリの日本人コミュニティ
2 フランスの公共サービス
おわりに
<b>第3章 「多文化共創」は、辺境にこそあり!</b>
<b>―― 北の島サハリンで考えたこと / 下川 進</b>
はじめに ―― 辺境に行ってみよう!
1 すぐそこにある不思議な島、サハリン
2 注目! コリア系サハリン人
3 領土問題の最前線ではあるけれど……
4 ここはかつて戦場だった
おわりに ―― 厳しい現実を超えて
<b>第4章 映画から学ぶ移民とダイバーシティ</b>
<b>―― 映像メディアのパワーと役割 / ダニエーレ・レスタ</b>
はじめに ―― 映画はなぜパワフルなのか
1 映像メディアの社会的役割
2 映画に見る移民とダイバーシティ
3 移民映画で地域交流!?
おわりに
<b>第?部 主体性と多様性の学びが未来を拓く</b>
<b>第5章 外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語教育</b>
<b>―― JSL教師の育成と支援を!/ 関口 明子</b>
はじめに
1 日本の難民受け入れ
2 難民への日本語教育
3 外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語支援
4 JSL教師の育成と支援を!
おわりに
<b>第6章 夜間中学でいつでも誰でもどこでも基礎教育を!</b>
<b>―― 義務教育機会確保法成立までの道程 / 関本 保孝</b>
はじめに
1 学習権が基本的人権を守る
2 多様化する夜間中学生
3 夜間中学での取り組み
4 すべての人に義務教育を!
5 政府が動き始めた
6 基礎教育保障学会の設立
おわりに――義務教育機会確保法が成立
<b>第7章 地域に根ざした大学のグローバル教育 </b>
<b>―― 秋田からの挑戦 / 椙本 歩美</b>
はじめに――農山村の多文化空間
1 国際教養大学の多文化共生キャンパスライフ
2 地域に根ざしたグローバル教育を創る
おわりに――秋田が世界とつながるとき
<b>第8章 庇護申請中の子どもたちと学び合う</b>
<b>―― 多様性を認め合う学校 / 土田 千愛</b>
はじめに
1 庇護申請者とは
2 庇護申請中の子どもたちの生活実態
3 多様性を尊重する企画づくり
おわりに
<b>第?部 まちも会社も活性化する「多文化共創」思考</b>
<b>第9章 多文化対応で住まい探しのお手伝い</b>
<b>―― 不動産屋が担う、まちのグローバル化 / 荻野 政男</b>
はじめに
1 海外渡航が仕事のきっかけに
2 住まいの情報を集めて回る
3 外国人向け賃貸事業を始める
4 グローバル化は不動産会社から
5 多文化スタッフによる「外国人サポートセンター」
おわりに
<b>第10章 多様性を生かせば経営が変わる</b>
<b>―― 多文化共創という理念と実際 / 市橋 和彦</b>
はじめに
1 多文化共創マーケティングが役立つ
2 マーケティングの原点は相手の心を理解して好きになってもらうこ
と
3 試作品の完成度が重要なポイントになる
4 「利他ファースト」に徹したマーケティングを実施
5 「あったらぜひ欲しい」を発見する
6 20歳までに多文化と接する
おわりに――多文化共創マーケティングのまとめと提言
<b>第11章 在日ブラジル人児童の心の支援</b>
<b>―― 外国につながる子どもたちの「育てられる権利」を守る /</b>
<b>柴崎 敏男</b>
はじめに ―― 子どもたちは今
1 子どもの育てられる権利
2 正常な生育とは?
3 在日ブラジル人支援とそこから見えてきたもの
4 外国人児童生徒の障害発現率問題
5 外国人児童のなかの発達障害の割合は本当に高いのか
6 特別支援学級
7 これからの子どもの支援 ―― <ruby>栴<rt>せん</rt></ruby><ruby>檀<rt>だん</rt></ruby>は双葉より芳し
おわりに
<b>第?部 いのちに国境はない</b>
<b>第12章 多文化スタッフが担うチーム医療</b>
<b>―― まちの多文化クリニックの試み / 冨田 茂</b>
はじめに――クリニックの成り立ち
1 言葉の問題
2 医療費と制度 ―― 外国人は医療費の支払いが困難なのか?
3 生活の変化と医療
4 病気の予防について ―― 健康診断
5 障害の予防について ―― リハビリテーション
おわりに
<b>第13章 医療現場の多言語化を担う</b>
<b>―― 医療通訳という仕事 / マ テン テン ウ</b>
はじめに
1 日本へ
2 医療通訳者になる
3 医療通訳者の仕事
おわりに――クリニックのスタッフとともに
<b>第14章 人のいのちに国境はない</b>
<b>―― 日本で作業療法士・医療通訳者として働きながら / 塩田 渡留侍</b>
はじめに
1 医療と福祉を学びたい!
2 プロになる!
3 心と心、個性と個性で接する
4 医療現場の多文化化
おわりに
<b>第15章 国際医療の現場と医療リテラシー</b>
<b>―― 地域で活躍するリーダーの育成 / 堀 成美</b>
はじめに
1 「国際」病院に「国際」診療部ができた背景
2 国際診療部と医療コーディネーター
3 コミュニケーションに不可欠な医療通訳の手配
4 医療通訳は誰のため?
5 外国人患者が増えると未収金が増えるという誤解
6 多様な文化についての学びと実践
7 地域に伝えていくこと
8 1点20円の重み
おわりに
<b>終 章 世界の混迷と危機を多文化共創のチャンスへ / 川村 千鶴子</b>
はじめに
1 路地裏は多文化の宝庫
2 10代のみなさんへ
3 いのちの大切さを教えてくれた、あらゆる民族の助産訓練
4 強制移動と平和のためのミュージアム
5 老年期を迎えるとき
おわりに ―― 多文化共創博物館
<b>多文化共創の実践者から政府・自治体への7つの提言</b>
川村 千鶴子[カワムラ チズコ]
川村 千鶴子
大東文化大学環境創造学部教授、博士(学術)
慶應義塾大学商学部卒業、多文化教育研究所所長、大東文化大学環境創造学部助教授を経て、2009年より現職(2013?15年、同学部長)。移民政策学会理事、日本オーラル・ヒストリー学会理事など歴任。
主要業績に、『多文化「共創」社会入門 ―― 移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2016年)、『パスポート学』(共著、北海道大学出版会、2016年)、『多文化都市・新宿の創造 ―― ライフサイクルと生の保障』(慶應義塾大学出版会、2015年)、『多文化社会の教育課題 ―― 学びの多様性と学習権の保障』(編著、明石書店、2014年)、『オセアニア学』(共著、京都大学学術出版会、2009年)など多数。
内容説明
ケアの実践こそが、平和な暮らしを守る。外国人住民の受け入れ拡大や東京オリンピック・パラリンピックの開催などを契機に、日本でも多様なルーツをもつ人々がさらに増え、私たちの身近なパートナーになるでしょう。一方、こうした変化に対し、テロや犯罪の増加を心配する声もあります。しかし、教育・住居・就業・医療などライフサイクルを通じた“共創”こそが、社会的リスクを回避するカギを握っています。いま、日本に必要なのは、多文化化のリスクを熟知し、「共創」の果実を社会に届けられる「いのちのケア」の「実践者」たちなのです。ぜひ、皆さんも本書に登場する「実践者」たちの「現場」からの声に耳を傾けてください。
目次
第1部 越境のすすめ(グローバル市民として生きる;僕がパリの外国人だったころ;「多文化共創」は、辺境にこそあり!―北の島サハリンで考えたこと;映画から学ぶ移民とダイバーシティ―映像メディアのパワーと役割)
第2部 主体性と多様性の学びが未来を拓く(外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語教育―JSL教師の育成と支援を!;夜間中学でいつでも誰でもどこでも基礎教育を!―義務教育機会確保法成立までの道程;地域に根ざした大学のグローバル教育―秋田からの挑戦;庇護申請中の子どもたちと学び合う―多様性を認め合う学校)
第3部 まちも会社も活性化する「多文化共創」思考(多文化対応で住まい探しのお手伝い―不動産屋が担う、まちのグローバル化;多様性を生かせば経営が変わる―多文化共創という理念と実際)
第4部 いのちに国境はない(多文化スタッフが担うチーム医療―まちの多文化クリニックの試み;医療現場の多言語化を担う―医療通訳という仕事;在日ブラジル人児童の心の支援―在国につながる子どもたちの「育てられる場所」を守る)
終章 世界の混迷と危機を多文化共創のチャンスへ(路地裏は多文化の宝庫;10代のみなさんへ;人のいのちに国境はない―日本で作業療法士・医療通訳者として働きながら;国際医療の現場と医療リテラシー―地域で活躍するリーダーの育成)
著者等紹介
川村千鶴子[カワムラチズコ]
大東文化大学環境創造学部教授、博士(学術)。慶應義塾大学商学部卒業、多文化教育研究所所長、大東文化大学環境創造学部助教授を経て、2009年より現職(2013~15年、同学部長)。移民政策学会理事、日本オーラル・ヒストリー学会理事など歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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