出版社内容情報
コトバの獲得によって人間は自然から文化へ移行したが,同時にすべての〈倒錯〉が始まった。ソシュールに学びソシュールを超える丸山言語・文化哲学の総決算である。
目次
胡蝶の夢―序にかえて―
第1章 本物と偽者
1 畸形化した現代文化
2 フェテシズムとは何か
3 四つのイドラ
4 科学という名の物神
第2章 病める動物=人間―ホモ・パティエンス―
1 意味=現象
2 二重分節
3 文化の位相―コスモスとノモス―
4 言葉と道具
5 欲求と欲望
6 カオスの発生
7 「今、ここ」での人間
第3章 <現前の記号学>の解体
1 現前の記号学
2 記号学の歴史
3 ソシュールとデリダ
4 指向対象の非在
5 <意味=現象>としての記号
6 共同主観性
7 動きつつあるゲシュタルト
第4章 フェテシズムは超えられるか
1 言葉と文化の相同性と物象化
2 読むということ
3 反記号学的実践
あとがき
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
13
大型の魚はフグを食べようとしても寸前で危険を感じて止めるのに、人間は食べられる物と有毒な食べられない物をもはや本能的に身分けできない。この身分けの段階に対し概念によって理解する言分けを中心に生きると、本能や自然と関係ない「食べてはならない」という禁止カテゴリーまで出てくる人間の奇怪な文化活動を、言語哲学の観点から読解。前半部の「最近の~はいかん」的な説教を越えれば丸山理論が乱舞するように展開。意識と無意識と言語の関係性を五段階に区分する手つきに、西洋批判ゆえの東洋思想への転向を警戒しつつも漂う仏教的論理。2017/12/31
♨️
3
物に踊らされている我々の状況を知り、それを打破するための思想が、構造主義の祖とされるソシュールのうちに実はいずれもあったとして、「人間は世界をどう分け、理解しているか」から始め、その分け方がどこから生まれてくるか、記号の生成=変化という問題にまで降りていく。ここから丸山が生成変化を跡付けるために精神分析を扱い出す(らしい)のも納得で、本書でもほとんど肯定的に言及されるクリステヴァとは関心が被っているのだと思う。クリステヴァを批判する浅田彰『構造と力』(実は浅田本の方が先に出た)とも比較してみたい。2022/05/09
らむだ
2
前半はすらすらと頭に内容が入ってきたが、徐々に難しくなっていき後半はかなり苦戦。要再読。2013/04/12
PukaPuka
1
前半は面白く、後半は難しかった。全体的に、大学の人文科学が今よりもっと生き生きとしていた時の空気を感じる。ほかの言語学の本をいろいろ読んでから再読かな。2020/01/10
うさぎさん
1
初めて記号論に関する本を読んだのだが大変興味深かった。理解できない部分も多々あったが、これからその部分を埋めていきたいと思う。しかし読んでいて構造に支配されている暮らしに気づかない自身、周辺に漠然とした不安を感じた。知らないことは幸せだと改めて思う。2015/01/30