出版社内容情報
【内容紹介】
落語の主人公を上方諸地に訪ねる笑いの巡礼記。古典落語の世界は、庶民がその人生の哀歓を生きた社会である。横町のきいやんや大家の娘(とう)さんの姿を、「三十石船」のくだった淀川、「野崎参り」の道筋からすくい出し、彼らの息吹をよみがえらせる。軽妙な語り口で紡がれる、“もう一つの落語”がここにある。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
57
上方落語のエッセンスを大阪の郷土史を織り込んだ形で解説しています。大阪ならではの味のある本です。昭和53年から昭和56年にかけて新聞に掲載されたものを再刊しています。ですので、今では懐かしい場所、風景、行事が模写されています。随所に挿し込まれた写真がとてもいいです。上方の懐の深さ、米朝師匠の懐の深さに脱帽しました。大阪を愛して止まない人は読んでみてはいかがでしょう。2018/03/15
Galilei
12
噺の場面は元より、師匠のまくらにはあちこち大阪の地名が出てまいりますな。『天神山』をあげても、天王寺さんの向いが、現在では立派な構えの一心寺ですが、噺の当時は殺風景。西へ下った安居の天神さんは、真田幸村が大阪夏の陣で討ち死にでしたな。▽この辺りは七坂と申しまして坂の名所。大阪の代表作家織田作之助の『木の都』にも登場する口縄坂を、逆に松屋町筋から昇ると谷町筋。界隈にはオサダクの生まれ育ったガタロ横丁もおます。この本を元に一寸広げますと、江戸~明治の噺に浄瑠璃から近代の作家まで楽しめる事請け合いでおます。
かもい
11
米朝師匠が大阪・京都をメインに各地を紹介、元は新聞連載。豊富な知識と語り口で昔の上方の姿や当時の人々が蘇る。学校の裏に喜六と甚兵はんが来てたんやな、とか何やらミーハーな気持ちにも。図版も多いが何分発刊が1981年。町並みも解説からさらに近代化しているが、二重に町の移り変わりを知れてお得感もあるか?取り上げられている地名も多いので、落語だけとは言わず時代小説を読む際にも手元に置いておきたくなる一冊。2015/04/07
sayzk
10
上方落語と縁のある場所をたどっていく本。読みながらついスマホでその場所を確かめてしまうので読了まで時間がかかった。 落語の舞台となる時代が江戸から明治で、本書が書かれた昭和50年代頃には既に演じられていないネタが沢山あることに驚いた。今後さらにやりにくくなっていくのでしょうか。2022/08/21
いちはじめ
6
上方落語に出てくる地名を紹介。落語案内にして大阪案内。米朝師匠の広範な上方落語の知識と味わいのある語り口が素晴らしい。2008/02/08