内容説明
花の季節、向島から橋場の渡しへ向う乗合船は花見客で混んでいた。そこへ、突然の喧嘩が起こり、小さい舟は大揺れに揺れる。いや、喧嘩を装った舟強盗。船頭に匕首を突きつけ、「くつがえったら一蓮托生、命が惜しくば、有り金残らずそこへ出せ」と舟を揺らす。大店の若い娘がおずおずと財布を渡そうと近づくや、脇差持った大男が手もなく川へ投げ込まれた。「さすが蔵前小町」人々はやし立てる中で「女のくせに見苦しい」と嘲笑する旗本の次男章二郎。蔵前小町はかっとなり、やがて二人は恋に落つ。時は幕未、時代の波が二人を飲み込む…。