出版社内容情報
仏教の汎神論的思想を容れて宋代に確立した朱子学,心即理・致良知・知行合一を説く明代に生まれた陽明学.両者とも近世中国を支配した儒教哲学であり,また唯心論的実践哲学である.日本人の倫理観にも大きく影響を与えたこれらの学説の成立過程と歴史的役割を明らかにし,中国思想史におけるその位置づけを試みる.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
8
若い頃、中国の思想をもう少し勉強しておけばよかった。道教や仏教の影響によって儒家から宋学が生まれ、それを朱熹が大成、さらに明代に入って王陽明が改変し‥‥と、基本線はこんな感じでいいのかな? しかし細かい所はまだまだ理解が及んでいないので、さらに学んでいきたい。そもそも朱子学の発祥にあたる、北宋の程明道など士大夫階級の考え方が良い。世界を自由に大きく捉えていてすばらしい。時代劇で過激派の男が「しん、そく、りぃっ!」と叫んでいたが、彼の心中にあるマグマのようなものが、少しは理解できるようになった?と思いたい。2012/12/15
ゆうきなかもと
5
再読 《元朝が、ひさしくやめていた科挙を再開したときには、科挙の学科で特に重んじる「四書」をたて、かつその注は朱子のいわゆる「四書集注」を用いることにし、そのほかの五経についても従来の指定学説であった古い漢唐の注釈のかわりに、朱子もしくはその弟子の作った新しい注が指定されることになった。》 つまり異民族の帝国が朱子学を国学の地位にまで高めた。そしてその後に東アジアの普遍的な思想になった。キリスト教や仏教も似たような流れで普遍性を獲得したのだが、朱子学は近代以降その存在感がないように感じる。(;・д・)2016/02/22
の
4
宋代に確立した朱子学を、取捨選択し陽明学に発展させ、更に仏教や儒教の思想と混然一体となっていく様を追う思想史。近世中国の国家指導者としての知識はこの二つの学問によるものだが、朱子学は外面的要因に頼り過ぎていた為、変わりゆく時代の波に乗ることが出来ず、陽明学が内的満足に重きを置くことで世界への柔軟な対応を可能にしたと言う所か。理気二元論や陰陽五行を権威的に受け入れることで発達してきた日本政治思想史(幕末での思想対立はまさにその典型だろう)とのリンクの面で読むのも面白い。2011/06/04
あらま
4
さすがに昔の新書は読みごたえがある。完成された朱子学より、内的な矛盾をはらんだ陽明学が、精神史を動かすエネルギーになっていく。そして最後に出てくる李卓吾がパンクでかっこいいぞ。2010/03/11
KN
3
従来は朱子学と対置して考えられてきた陽明学を、朱子学の内的発展の成果として捉える点が特徴。記述のレベルが高く、入門書として読むには微妙だった。2018/11/15