出版社内容情報
あまりにも巨大な竜グリオール
彼の上には川が流れ村があり、その体内では四季が巡る
“舞台”は動かぬ巨竜
唯一無二のシリーズ短篇集が遂に日本初刊行
初邦訳1篇 初収録2篇
全長1マイルにもおよぶ、巨大な竜グリオール。数千年前に魔法使いとの戦いに敗れた彼はもはや動けず、体は草木と土におおわれ川が流れ、その上には村ができている。しかし、周囲に住むひとびとは彼の強大な思念に操られ、決して逃れることはできない――。
奇想天外な方法で竜を殺そうとする男の生涯を描いた表題作、グリオールの体内に囚われた女が見る異形の世界「鱗狩人(うろこかりゅうど)の美しき娘」、巨竜が産み落とした宝石を巡る法廷ミステリ「始祖の石」、初邦訳の竜の女と粗野な男の異類婚姻譚「噓つきの館」。
ローカス賞を受賞したほか、数々の賞にノミネートされた、異なる魅力を持つ4篇を収録。動かぬ巨竜を“舞台”にした傑作ファンタジーシリーズ、日本初の短篇集。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
134
お気に入りさんの感想とこの本の表紙を見てすぐに読んでしまいました。ファンタジーという分野に分類したのですがもう少し深い意味がありそうな話でした。いくつかの話が入っているのですが、この表題作が矢張り一番ん印象に残りました。ものすごく大きな竜ですが、すでに死んで土地と同化しているのですが、精神的なものでそこに住む人々を拘束している、という話はどこかにありそうな話だと感じました。2018/10/10
星落秋風五丈原
81
解説で読んだ著者の経歴が面白かった。荒ぶる竜=自分で、倒した魔術師があの人だろうな、と。欲求不満をうまく昇華してますな。魔術師との闘いでもう動かないのに村の人々に影響を与え続ける竜。連作をよしとしない著者が珍しくシリーズ化したのだからよっぽど竜が気に入っていたのだろう。一度魔術師に倒されたのだから決して民を襲うことはないのだけれど、ただそこに存在するだけで民を支配しているという設定が面白い。2018/09/30
sin
71
詐欺・託宣・殺人・代理、収められた4つの短篇を表現すると、この様な言葉が思い浮かぶ。景観の一部と成す様な“バカでかい竜”…その発想が物語の核だ。タイトルの『竜…に絵を描いた男』なんともファンタスティックな情景が想い浮かぶが、そうした美しい想像を裏切る泥々とした人間臭い物語が綴られる。竜は巨悪を象徴し人はその影響を受けてか、そう思い込んでか、臆病かつ乱雑に暮らしている。この物語の退廃は世界観か、はたまた作者が思いつきに任せて物語を紡ぎ上げたせいか、魅力的なのに興味を保てない不思議な世界の拡がりを感じた。2024/01/23
☆よいこ
69
表紙に魅かれて読了。文庫で1,100円、納得のボリューム。巨大な竜「グリオール」は数千年前に魔法使いとの戦いに敗れ動きを封じられた。しかしグリオールは永遠に生き続ける竜。邪悪な気配を振りまき周辺に影響を与え続けている。やがてグリオールの体は草木に覆われ川が流れ村ができる。[竜のグリオールに絵を描いた男]絵を描くことでグリオールを殺す[鱗狩人の美しき娘]竜の体内に囚われた女の話[始祖の石]司祭を殺した犯人は?法廷ミステリー[嘘つきの館]竜の女との異類婚姻譚▽大人向けドラゴンファンタジー4編。2019/07/09
いちろく
48
読書会交換本。国政でも、宗教でも、時風でもなく、竜の強大な思念に影響を受けて逃れる事が出来ない人々を描いたSFファンタジー。竜の存在そのモノが日常に溶け込んでいる事が興味深かった。呼吸をする様に当たり前に受け入れている様な描かれ方が特に。ページを捲る前は、竜に取り込まれた人々を描く発想の勝利と思ったけれど違った。これは、竜という存在に無意識に、意識的に、影響を受けた人々の物語。作風に関しては、正直始めは合わなかったけれど不思議と慣れていった。まるで作品の世界に私も取り込まれた様に。2019年の読み初め。2019/01/01