内容説明
1938年。ドイツ猟兵部隊のヨーゼフ・ベッカーは卓越した登山技術を使い、仲間とけわしい山を越えてのユダヤ人の国外逃亡を助けていた。だが、ある日彼らは捕縛され友人たちは罠にかけられ命を落とす。ただひとり生き残ったヨーゼフにヒムラーから指令が下る。それは、ナチスのために史上初のエベレスト制覇を成し遂げろというものだった―。現代。ニール・クインは山に魅入られた男だが、いまでは金のために山岳ガイドをしている。少年冒険家のエベレスト登頂に付き添っていたが、少年は急死しガイド社の社長であるサロンからは必ず復讐をすると宣言される。彼に残されたのは頂上近くで発見した、鉤十字が刻まれた1本のピッケルだけだった。そして、そのピッケルが彼の運命を大きく変えてゆく―。
著者等紹介
ファージング,ハリー[ファージング,ハリー] [Farthing,Harry]
1963年生まれ。王立地理学会のメンバーでもある。不動産コンサルタントとして成功するかたわら、キリマンジャロの頂上を制覇するなど、登山家としても活躍。2010年にコンサルタントを引退して執筆を開始し、2014年に『汝、鉤十字を背負いて頂を奪え』でデビュー。現在はアメリカに移り住む
島本友恵[シマモトトモエ]
京都府出身。ロマンス、ならびにミステリーの訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はるを
50
🌟🌟🌟🌟☆。俺に取ってハズレがない小説ジャンルが3つある。「熊小説」「潜水艦小説」そして「山岳小説」だ。購買意訳が湧く竹書房の凝った装丁を誰かが「ミニ単行本」と評していたけれど上手い例えだと思う。2009年のニール・クインという登山ガイドと1938年のヨーゼフ・ベッカーという軍人の話が同時平衡して進む物語。日本語でそのまま書いたとしか思えない滑らかでとても読みやすい翻訳とエンタメに富んだ著者の筆致力のハイブリッドでページを繰る手が止まらない。分厚いけれど活字も大きめなのでサクサク進む。面白い。2023/07/20
goro@80.7
50
大仰な題名だけど、これは俄然引き込まれる山岳小説だ。1939年のナチス山岳猟兵ヨーゼフによる極秘エベレスト登頂作戦と2009年エベレスト商業登山で富豪の息子を遭難させてしまったガイドのクインの物語が交互に展開する。ナチスに脅されながら登頂を目指すヨーゼフの境遇、悪徳ツアー会社から狙われる羽目になったクインの話がどこで交わって来るのか目が離せない展開は下巻へ続く。またクインはエベレストへ登るのか?一本の古いピッケルが何を物語るのか興味津々だわ!これは面白い。2022/02/13
Panzer Leader
45
WWⅡ開戦前、卓越した登山技術を駆使してユダヤ人国外逃亡を助けていた山岳猟兵部隊所属のベッカーらはある日ドイツ軍当局に逮捕される。仲間を失い家族を人質に取られた彼はヒムラーより人類未踏のエベレストを踏破せよとの命令を受ける。そして現代、ベテランの山岳ガイドのクインは大富豪の息子のエベレスト登頂を成功させるも無事に下山させることが出来なかった。下山途中鉤十字付ピッケルを手にした事から運命が変転していく。二つの時代を舞台にした山岳冒険小説、いざ後編へ!この題名は見ただけで内容がわかる格調高くて秀逸。 2019/12/26
MatsumotoShuji
3
このタイトルだけでご飯3杯はお替りできるってくらいすごいタイトル。タイトルだけでほぼストーリーが想像できるし、想像しただけで泣けてくる。「鷲は舞い降りた」とか「ベルリン飛行指令」みたいな漢(おとこ)の物語に違いない! 実際冒頭のエベレストのシーンから期待を裏切らないド迫力。ところが……。2018/06/15