内容説明
怪異に魅入られた著者・小田イ輔が真摯な取材の末に紡ぎあげた恐怖の怪談集。墓地で暴れ回る者がいると寄せられた苦情の真意「護りの役目」、墓の中に納められていた見知らぬ壼の怪「指壼」、学生時代のイジメの記憶がもたらす狂気「因果の行方」など、思わず引き込まれる、不気味で怖い37編収録。
目次
県道沿いの贄
護りの役目
OK!
Aさんの話
虫の知らせ
逃げているような人
察知
ずっとはあった
みせこや
腰かけている人〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
148
小田イ輔さんの実話怪談を読んで巡る因果と人の業について強く意識させられましたね。あとがきで体験者の方々の話の重みを強く感じると述べられているのを読むと本当に真面目な方なのだなと実感いたしましたね。色々な話がありますが、シンプルに怖い生き物の祟りと呪いの話を紹介します。『一九九二年八月の蛇』近所にいるタチの悪い中学生「はなたらしK」が気の弱い小学生を集めて虫を殺させたりしていたが、今度は蛇を2匹捕まえて戦わせる事を命じる。罠にかかった白蛇を彼らは逃がそうとするが上手く行かずKが来て徐に白蛇の頭を踏み付ける。2020/10/11
HANA
64
実話怪談集。とにかく上手い。何かが起こっているのに、その何かを直接描写せず読者の想像力に委ねている。何かが起こっているのに結末だけを知らされる。その何かが読者の中でどんどん肥大して恐ろしくなっていくのは、まさに怪談の面目躍如といったところ。収められている話も、玉石混交どころかほとんど石のない本書であるが、「あの日の話」「因果の行方」が兎に角素晴らしい。前者は語りとは何か、後者は怪談とは何か、というのに直接触れた話ではないかと思われる。本書のようなものがあるから、怪談を読むのは止められないのだ。2016/07/04
夜間飛行
55
ここにある怪異譚は何かを告げ知らせるような意味を持つものが多い。だから登場人物は忌まわしい何かから身を避けることができ、極端にひどい目に遭いはしない。が、何か釈然としないままに終わる。平行線の怪談なのだ。悲惨なことが起きるわけでもなく、かといって解決するわけでもない。今回はたまたまやり過ごすことができた…そんな話がほとんどである。そこには、怪異が解消されない、というじわじわくる怖さがある。とはいえ、中には「みせこや」という駄菓子屋と子供達を巡る話のようにほのぼのと心温まる題材もあって、ほっとさせてくれる。2016/08/13
ネムコ
41
一冊全部小田さんの本は初めてでしたが、とても面白かったです。怖い話、不思議な話などバラエティーに富んでて、特に娘の災いを己が身に引き受けた父親の話「虫の知らせ」、体験者が「これは脳内彼女じゃなくて幽霊として纏めてくださいね」と念を押す「幽霊だったってことに」、陰湿ないじめっこが因果応報、白蛇の祟りを受けた「1992年8月の蛇」などが印象的でした。2017/08/21
pulpo8
32
「Aさんの話1、2」からの「虫の知らせ」の流れにグッと掴まれた。「みせこや」「無かった思い出」「家族の都合?」など不思議な味わいのある話もいい。「魚と猿の魚」にはうわぁ…駄目か~と衝撃を受ける。「つまり」つまり何なんだ(笑)。「指壺」風習とか血統とか、背景に深ーいものがありそうでとても興味深い。「あの日の話」津波が来て急に善人になるか?何も言えない…。「因果の行方」小説のような見事な締め。全体的にいい感じだな、と読み進めていたら途中で著者が黒木あるじの推薦で登場したと知り納得。他の著作もどんどん読みたい。2017/04/27