"虚構"の可能性
―10年代論壇と3・11以降の政治と物語、そして想像力
作品社発行『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』の著者藤田直哉さんより、「"虚構"の可能性 ―10年代論壇と3・11以降の政治と物語、そして想像力」というテーマのもとエッセイをいただきました!
また、3階哲学フェア台にて藤田さんに選んでいただいた書籍を展開中です。ぜひご覧くださいませ。

藤田直哉さんエッセイ

3・11以後、より苛酷さをむき出しにし、そのリアリティを突きつけてきた"現実"。
しかし、その現実をただ受け入れるのが人間ではない。
われわれ人間は、すでに《虚構》を経由しなければ、理解や認識もできない。
さらに、現実を超えることをこそ願うのが人間である。
その《虚構》のなかでは、ネット上の言説、そして二次元のキャラクターなどのオタク・カルチャーが
大きな位置を占めようとしている。そのことを無視することなく、向き合うことがなければ、新しい社会も政治もありえない。
本フェアはより現実原則がより剥き出しになりつつある現状、死と生、政治思想に対し、
"虚構"の可能性を全面的に擁護するものである。"虚構"によって、新しい世界が、拓かれる。
新しい世界、魅力的な社会、それらは理念や理想社会という「虚構」の中で夢見られる。
しかし、「虚構」に時には人は踊らされ、深刻な社会現象を起こす。
「マスゴミ」といわれるマスメディアの作る虚構を拒絶し、ネットにある「真実」という名前の「虚構」を信じている
在特会はそのひとつの例である。彼らの信じている特権を持った「在日」は、《虚構内存在》に過ぎないのではないか。
だが、その「虚構」こそが真に力を持った社会運動として現実化している。
歴史を「事実」ではなく認識の力で変えてしまうという虚構の力、あるいはキャラクターへの愛ゆえに駆動する
ネット上の政治運動、そして死や生の意義を理解するために必要になる、存在論的な意味を与える、宗教的ですらある虚構。
それらは危険でもあるが、人間が生きるためにどうしても必要なものである。
虚構の力を理解し、その絶大なる力を制御し、より良い未来を作るための力にするために、虚構を徹底的に問い、
その可能性を知るために必要な60冊を選んだ。
特に筒井康隆が多いのは、日本においてその問題を先駆的に、最も深い形で思考した人物が彼だからである。
今ほど人が中身のない単純な虚構に動かれやすい時代はない。
だからこそ、虚構について真摯に問うべきであり、それを可能性に変かなくてはならない。
そうすれば、やがて「希望」は夢ではなく、現実になるだろう。
■自著関連
藤田直哉さんコメント 日本文学史上もっとも苛烈な実験小説を残した筒井康隆。彼の中心的な理論である「超虚構理論」とその実践を検討することで、「虚構と現実」の対立を超えた「超虚構」の意義と可能性を探求する。サブカルチャーと純文学において絶大な影響を与え、大衆的な支持と文学的な評価を得た筒井康隆という人物を検討することで、戦後日本の課題と、それを乗り越えるべく彼が提案した「超虚構」の可能性を現代に生かす! 「政治」と「文学」を分けるのではなく、渾然一体となりつつある現代に、「虚構内存在の政治」とも言うべき新しい一撃を食らわせる渾身の一作。(と、自分で書くと、恥ずかしい)
聖痕
筒井康隆 / 新潮社
2013/05出版
ISBN : 9784103145301
¥1,470 (税込)
虚人たち
筒井康隆 / 中央公論新社
1998/02出版
ISBN : 9784122030596
¥740 (税込)
藤田直哉さんコメント 自分たちが虚構の中の存在であると自覚している登場人物が、「1頁1分」という条件で、描写で時間を省略されることなく描かれる。登場人物も、風景も、読まれることを意識した「虚構内存在」として、小説内で演技をする。過剰化した自己意識・演技意識が小説構造まで徹底していった驚異的な作品。谷崎潤一郎賞を受賞した。本作で提示されるのは、ハイデッガーの、死に先駆する存在である「世界=内=存在」と対比されるべき、「虚構=内=存在」である。その存在論が、ここにおいて示される。
夢の木坂分岐点
筒井康隆 / 新潮社
1990/04出版
ISBN : 9784101171241
¥500 (税込)
藤田直哉さんコメント 夢の木坂駅で乗り換えて西へ向かうと、サラリーマンの小畑重則が住み、東へ向かうと、文学賞を受賞して会社を辞めたばかりの大村常賢が住む乗り換えないでそのまま行くと、専業作家・大村常昭が豪邸に住み、改札を出て路面電車に乗り、商店街を抜けると...。夢と虚構と現実を自在に流転し、一人の人間に与えられた、ありうベき幾つもの生を深層心理に遡って描く谷崎潤一郎賞受賞作。
朝のガスパ−ル
筒井康隆 / 新潮社
1995/08出版
ISBN : 9784101171340
¥580 (税込)
藤田直哉さんコメント 朝日新聞に連載された、読者参加型小説、もとい、読者罵倒型小説。作中の物語展開に対して、新聞の投書とパソコン通信「電脳筒井線」の人々が好き勝手に意見を言い、それが作中で取り上げられ、作中作者と議論し、罵倒され、喧嘩になる。本作は筒井康隆の実験小説の中でも屈指の出来であり、「超虚構理論」の実践におけるひとつの重要な成果である。この「論争」の作品化の後に、実際にマスメディアや新聞を騒がせた「断筆宣言」を巡る論争があることを考慮すると、「断筆宣言」前後の騒動の見え方が変わってくる。「虚構の側から現実への侵犯」をこそ、本作が志向していたことの延長でそれらを理解するという認識の枠組みが手に入るからだ。本作と「断筆宣言」は、今で言うならば「炎上商法」や、タブー破りによってマスメディアにおける大向こうウケを狙う様々な政治家たちの姿を彷彿とさせる。
着想の技術
筒井康隆 / 新潮社
1989/09出版
ISBN : 9784101171234
¥460 (税込)
藤田直哉さんコメント 「超虚構理論」の考え方が最も直接的に表明された名エッセイ「虚構と現実」が収録されている。たとえば、作中に書いた事件などが実際に起こるなどの形で、虚構が現実に模倣されるようになってしまった現実は、もはや「疑似虚構」であり、現実に「虚構感」を覚えるほどになってしまっている。そんな時代の虚構にできることは何か。現実には模倣されない「虚構」として、「虚構性の自立」を行うこと。筒井康隆が「超虚構」に賭けた文学的信念を知るためには、まずは本エッセイを読んでみてほしい。
残像に口紅を
筒井康隆 / 中央公論新社
1995/04出版
ISBN : 9784122022874
¥780 (税込)
藤田直哉さんコメント 筒井康隆の実験小説の極北。なんと、五十音+濁音・半濁音が、一節ごとに消滅し、使えなくなっていく。「言葉」を徹底的に苛め抜くことで、そのような言葉に如何に依存しているのか、また、言葉なくして様々な「存在」すら消滅していくのかが浮き彫りにされていく。言葉によって認識も存在も愛着も存在していることを強く意識化させられる傑作。「言葉狩り」は存在の豊かさすら奪うものである。
ベトナム観光公社
筒井康隆 / 中央公論新社
1997/12出版
ISBN : 9784122030107
¥580 (税込)
藤田直哉さんコメント 世界は疑似イベントに化した! マスメディアが、実態のない場所に戦争すら作り出し、人々は「誰かに見られている」ことを常に意識してタレントのように振舞わなければならず、一般人すらスキャンダルの目から逃れられない。......60年代から筒井康隆が執拗に描いていたテーマは、インターネットとSNSの発展によって、より大衆化し、現実化した。戦争すら、娯楽目的の見せ物であり、「演じられる」ものに過ぎない。
■人文・評論書 存在と時間
マルティン・ハイデッガ−、原佑 / 中央公論新社
2003/04出版
ISBN : 9784121600516
¥1,680 (税込)
藤田直哉さんコメント 科学を問い、科学技術によって貧しくなったかのように感じられる「生」そのものを取り戻そうとする。あまりにも難解な文体の底流には、喪失した「故郷」を再獲得したいという欲望が眠っている。日常性に頽落してお喋りばかりしているうちに「本来性」を失った人間は、死を自覚して直視し、先駆することで「本来性」を取り戻せるという。これ自体が、充分にフィクションである。命からがら、ギリギリのところで命が助かった震災の被害者や、遺族たちは、「死」を直視したから、「本来性」を取り戻したのだろうか。日常を失い、日常性への頽落から目覚めて、結局なんだと言うのだろう。
存在と時間
マルティン・ハイデッガ−、原佑 / 中央公論新社
2003/05出版
ISBN : 9784121600530
¥1,838 (税込)
(同コメント)
存在と時間
マルティン・ハイデッガ−、原佑 / 中央公論新社
2003/06出版
ISBN : 9784121600554
¥1,680 (税込)
(同コメント)
技術への問い
マルティン・ハイデッガ−、関口浩 / 平凡社
2009/09出版
ISBN : 9784582702286
¥2,940 (税込)
デカルト的省察
エトムント・フッセルル、浜渦辰二 / 岩波書店
2001/02出版
ISBN : 9784003364338
¥987 (税込)
共同存在の現象学
カルル・レ−ヴィット、熊野純彦 / 岩波書店
2008/10出版
ISBN : 9784003369319
¥1,260 (税込)
夢と実存
ル−ドヴィヒ・ビンスヴァンガ−、ミシェル・フ−コ− / みすず書房
2001/06出版
ISBN : 9784622051015
¥2,520 (税込)
藤田直哉さんコメント 「現存在分析」の代表的な書き手、ビンスワンガーの著作。現象学と精神分析を融合しようとした彼の立論において、夢は実存を支える重要な意義を持っている。宇宙論的な意義の中に位置づけることはなくなり、孤独感と喪失感に苛まれる自我に対し、夢はその代償の体験を与える。夢を、人間の存在に対して、重要な存在論的な足場と看做そうとするこの論は、今なお新鮮である。序文はなんと、フーコーのデビュー論文。
虚構と想像力 文学の人間学
ヴォルフガング・イ−ザ−、日中鎮朗 / 法政大学出版局
2007/09出版
ISBN : 9784588007941
¥6,615 (税込)
批評の解剖
ノ−スロップ・フライ、海老根宏 / 法政大学出版局
1980/06出版
ISBN : 9784588000973
¥6,300 (税込)
藤田直哉さんコメント フライの見立てでは、フィクションというのは次のように発展している。すなわち、神話、英雄、悲劇ときて、リアリズム、そして風刺である。これらは、主人公が全能の存在から、やがて人間の水準になり、さらに見下げられる存在になっていくという過程を経ている。そのようにして発展してきたフィクションの果て、モダニズム小説やSFの中に、再び「神話」が回帰しているとフライは指摘する。ではぐるぐる回るだけなのか? おそらくそうではない。この第六段階は、いわば「虚構性の自覚された神話」であり、宇宙論的な意義を直接的に信じられた神話ではない。いわば、失われた、人間の存在価値、宇宙論的意義を回復させるために、あくまでフィクションとして求められてしまう「神話」の時代である。
ドストエフスキ−の詩学
ミハイル・ミハイロヴィッチ・バフチン、望月哲男 / 筑摩書房
1995/03出版
ISBN : 9784480081902
¥1,575 (税込)
藤田直哉さんコメント ロシアの文芸評論家・バフチンがドストエフスキー論を一新した歴史的名著。ドストエフスキーの小説世界で起こる議論、掛け合い、騒動を「カーニバル」として捉え、カーニバル的要素が如何に文体や構成の仕組みとして書かれているのかを分析する。バフチンは、そもそも「うんこ」「おしっこ」大好き作家であるラブレーの研究者だったが、そのような下品なギャグのような「カーニバル」を、真面目なはずの、ドストエフスキーの書く政治小説に見出したところが卓見。2ちゃんねるなどの「祭り」が醸成したメンタリティが、街頭などでの政治的運動となっている現在を見るために応用ができる。
幻想の未来/文化への不満
ジ−クムント・フロイト、中山元 / 光文社
2007/09出版
ISBN : 9784334751401
¥760 (税込)
藤田直哉さんコメント "人間には〈死の欲動〉が存在すると認めてしまって以降のフロイトの文化・芸術論。人間には自己破壊や攻撃衝動が本能的に存在すると思わざるを得なかったフロイトは、人間相互の攻撃性を抑える装置として、文化・芸術を考えた。社会は「死の欲動」を、法や教育によって抑え付けないと維持できないが、押さえつけた結果、「文化への不満」という「攻撃衝動」がより高まるという悪無限的な循環から人類は逃れられないかもしれないと、フロイトは悲観的に述べる。文化や芸術とは、その欲動を「昇華」し続けるために人類が必要とした装置なのではないかとすらフロイトが考えているのは、恐ろしい。
"
戦争と映画 知覚の兵站術
ポ−ル・ヴィリリオ、石井直志 / 平凡社
1999/07出版
ISBN : 9784582762952
¥1,365 (税込)
未来の考古学
フレドリック・ジェイムソン、秦邦生 / 作品社
2011/09出版
ISBN : 9784861823312
¥3,990 (税込)
藤田直哉さんコメント マルクス主義批評を展開するジェイムソンが、資本主義社会の中で、「高級文学」とは別種の展開をしているSFというジャンルの可能性を擁護する、大著のSF・ユートピア小説論。大雑把に要約するならば、SFは、高級ではなく、無造作に書かれて消費されるが故に、独自の表現をすることができ、そうであるがゆえに、抑圧されている「ユートピア的衝動」が、時に荒唐無稽であることすら恐れずに出てくる、ということである。本来、ユートピア的衝動は不可能なものを目指すものである。だから、どんな荒唐無稽や、現在の倫理に反するものであっても、それが「夢見られる」権利を剥奪してはならない。荒唐無稽であることを厭わない、あるいは恥じないSFこそが、現在の「政治」の常識の中では笑われたり提案することを拒まれるような、ユートピア的衝動を表現するための受け皿となるだろう。政治は、あるいは政治に望むものは、そのように拡大されて構わないはずだ。魅力的な未来を手にするためには、まずはそのように「政治」イメージを変革しなくてはならない。
未来の考古学
フレドリック・ジェイムソン、秦邦生 / 作品社
2012/12出版
ISBN : 9784861824142
¥3,570 (税込)
(同コメント)
神話の力
ジョ−ゼフ・カンベル、ビル・モイア−ズ / 早川書房
2010/06出版
ISBN : 9784150503680
¥1,050 (税込)
幸せな未来は「ゲ−ム」が創る
ジェイン・マクゴニガル、藤本徹 / 早川書房
2011/10出版
ISBN : 9784152092298
¥2,940 (税込)
藤田直哉さんコメント マクゴニガルは、いわばゲーミフィケーションの論者である。だが、その主張は、「ビジネスにゲームの手法を取り入れよう」などというようなものではない。「現実は壊れている」から、ゲームによって丸ごと作り変えてしまおうという、ラジカルな、「現実」に対する革命的なことをすら提唱する。とはいえ、その内実は「ゲーム」を、報酬がないのに楽しい労働であると捉えることによって、労働・介護・家事などを、脳内報酬系を刺激する「楽しい」ものに変えてしまおうというものである。一般的な革命や社会運動とは違い、「楽しさ」や「ゲーム性」を人々を動員するリソースにし、「現実」そのものを改変してしまおうというこの壮大な思想は、おそらく政治の未来にとって無視できるものではない。
意識は傍観者である 脳の知られざる営み
デイヴィッド・M.イ−グルマン、大田直子(翻訳家) / 早川書房
2012/04出版
ISBN : 9784152092922
¥2,520 (税込)
藤田直哉さんコメント 脳は、自分が何かを「したい」と意識したときには、すでにそれを行っている。この事実は、人間の自由意志という考え方を根底から覆してしまう。そのことが起こるのは、脳のモジュールが意識や意志より先に物事を判断し、実行しているからである。その大半は意識に上ることはない。だとすれば、意識とは何をしているのか? それは、各モジュールの判断が葛藤した際に生じたり、様々な断片を結びつけ、「物語」として解釈をする機能を持っているに過ぎない。それは、時に自身の意志や行動理由すら「捏造」する。それらが自動的に起こってしまう脳の機械的な仕組みを理解することは、「物語論」としても、あるいは「物語」を利用する政治の立場からしても重要なことであろう。もはや「物語」というよりは、脳内報酬系に対する刺激によるコントロールとも言うべき人間管理の手法が前景化してきている時代に必須の一冊。『幸せな未来はゲームが創る』と併読されたい。
藤田直哉さんコメント キャラクターがどのような存在論的位相にあり、何故人間は感情移入をするのか、その仕組みは未だによく分かっていない。感性工学的アプローチや脳科学的アプローチ、それから宗教的・伝統的バックグラウンドから説明するアプローチなど、様々なキャラクター論があるが、本書はフッサールの現象学の立場から「萌え」に迫る。「準―感情移入」という概念を導入した、「萌えの現象学」は、新しいキャラクター論へのアプローチである。本書全体は、小森史観による、ゼロ年代アニメの総論とも言うべきもの。どのアニメやコンテンツを代表にするかによって、『動物化するポストモダン』などの有力な論とは違う時代像が浮かび上がってくる。
藤田直哉さんコメント 人間は「観念」を抱いてしまう。そして「観念」にとりつかれる。「観念的倒錯」を起こしてしまった人間は、もはや現実や生活や生命よりも「観念」を優先するようになってしまう。連合赤軍事件を分析しながら、観念の自己運動の中に巻き込まれる人間という悲劇を描いた笠井潔の代表作。とはいえ、現在では「観念」の持っているリアリティを共有されうるような状況になっているのかについては疑問がある。『テロルの現象学』刊行以後、現在までの状況を、アニメやサブカルチャーも込みで解説した「補論」が、笠井のその危惧を明瞭に示している。いまや人間を「観念的倒錯」にまで追い詰める「観念」のリアリティはないのではないか。代わりにあるのは、空気やつながり、萌えや祭りなどなのではないか。観念の垂直的な超越性の感覚は失われつつあり、別種の原理が人を駆動させているように見えるが、それでもなお、ここに描かれた倒錯と悲劇の構図は現在でも(軽い形で)反復されているのは不思議なところ。
核時代の想像力
大江健三郎 / 新潮社
2007/05出版
ISBN : 9784106035845
¥1,470 (税込)
虚構の時代の果て
大澤真幸 / 筑摩書房
2009/01出版
ISBN : 9784480091970
¥1,260 (税込)
虚構世界の存在論
三浦俊彦 / 勁草書房
1995/04出版
ISBN : 9784326153053
¥3,885 (税込)
藤田直哉さんコメント 分析哲学を中心とした理論で、虚構世界や虚構存在について緻密に腑分けし、その存在論を追及するという哲学書・フィクション論。可能世界論を導入し、テクニカルかつ緻密な読解の果てに、「虚構」と「現実」は同じ「存在性」を持つとされる。その議論についていけるか、納得ができるかは別として、哲学的な思考がやがて「虚構実在論」になっていく様は、良質のSFのような展開である。三浦の『可能世界の哲学』も、可能世界論を追及していくうちに、宇宙と存在の謎を巡る壮大なテーマに飛躍する、ぶっ飛んだ哲学書であった。
物語消費論改
大塚英志 / アスキ−・メディアワ−クス
2012/12出版
ISBN : 9784048867610
¥980 (税込)
藤田直哉さんコメント "東浩紀『動物化するポストモダン』にも影響を与えた「物語消費論」。「創作する消費者」の像を提出したその理論を、「プロパガンダ」であったと反省し、ネット出現以降の「愚民社会」において、自身の論を清算すべく書かれた一冊。断片をモンタージュし、「物語」を作り出す「消費者」の出現について、大塚は本書で、その「消費者」たちの欲望が自分たちを縛る事態に陥っていると指摘。国家や制度ではなく、「消費者」たちが自らを縛る。そんな世界において、陰謀史観的な言説が生成し、それらがサブカルチャーか政治かを問わず、世界認識を構成している。この状態に大塚は腑分けし、介入しようとする。「消費者」自らによって「生成」され、自縄自縛になる「物語」が、「日本」や「愛国」という「大きな物語」の形に収斂しつつあり、「独裁者なきファシズム」に陥っているからだ。
"
無意識の構造
河合隼雄 / 中央公論新社
1977/09出版
ISBN : 9784121004819
¥693 (税込)
藤田直哉さんコメント "無意識には構造がある。ユング理論を用いて、人類が共通して持っているとされる「普遍的無意識」の層にある「元型」の観点から、人間がなぜ神話や物語を必要とするのかを説き明かす、河合隼雄物語論の中心的な書物のひとつ。昔話などの物語のパターンや、来訪患者のエピソードを分析することで、人類が、というよりは、日本人が持っている「文化的無意識」の層を分析する。そのような「物語構造」や「元型」に無意識がある程度従ってしまうことに対し、「物語批判」の態度を採るというよりは、それ自体は受け入れた上で、その「文化的無意識」の問題を改善しようと試みる。
"
遺体 震災、津波の果てに
石井光太 / 新潮社
2011/10出版
ISBN : 9784103054535
¥1,575 (税込)
ポスト3・11の科学と政治
中村征樹 / ナカニシヤ出版
2013/02出版
ISBN : 9784779507229
¥2,730 (税込)
■フィクション いま集合的無意識を、
神林長平 / 早川書房
2012/03出版
ISBN : 9784150310615
¥651 (税込)
この空のまもり
芝村裕吏 / 早川書房
2012/10出版
ISBN : 9784150310844
¥714 (税込)
藤田直哉さんコメント 現実の上に虚構を重ね書きできる「拡張現実」(作中では強化現実)装置が一般化した未来社会において、民族主義や排外主義が勃興していた。政府が拡張現実世界における誹謗中傷やプロパガンダのタグに対策を施さないため、人々は「架空政府」と「架空軍」を組織した。排外主義的な主張を行う架空軍の人々が新大久保で暴動を起こしたとき、架空政府は、そして政府はどうするのか。拡張現実と、現実の排外主義運動の未来をSF的に幻視した快作。
藤田直哉さんコメント 人工知能が人間の知能を超えてしまった〈シンギュラリティ〉後の人間はいったいなにをすれば良いのかを真剣に模索した現代日本SFの傑作。美少女の"かたち"によって、簡単に主人公を篭絡してしまうそのAIは、日本のキャラクター文化の延長で考えられるべきものであろう。キャラクターを演じ、人間の脳を"アナログハック"してしまう超高度AIに人類を任せるべきか否かの葛藤が作中で描かれる。簡単に騙される"チョロい"主人公、人類の知能を易々と超えてしまった超高度AIがもたらす謀略に対抗しなければならないと思う者、AIなどが仕事を奪うので、"抗体ネットワーク"というテロ組織に加担する者。その三つが、バトルの形を借りて、思想上の争いを行っている。それは今まさに"コンピューター"という知能の存在感が増しつつある現代における、新しい知性との共存を巡る政治を描いた小説としても読むことができる。(筆者と長谷敏史のトークショーにおいてその問題を中心的に語ったので、興味がおありの方はWEBにある音声記録も是非聞いてみてください)
屍者の帝国
伊藤計劃、円城塔 / 河出書房新社
2012/08出版
ISBN : 9784309021263
¥1,890 (税込)
Omega tribe
玉井雪雄 / 小学館
2001/12出版
ISBN : 4091856225
¥530 (税込)
南極点のピアピア動画
野尻抱介 / 早川書房
2012/02出版
ISBN : 9784150310585
¥651 (税込)
藤田直哉さんコメント かつて、人間は、未来にある理想や理念を信じ、駆動した。そしてそのことによって自分の人生を意義付けようとすらした。「大きな物語」と言われるものである。野尻抱介が描くのは、初音ミクを思わせる架空のCGの美少女キャラクターこそが「理念」や「理想」の代わりに、人々を吸引し、動員する結集軸となっていく未来社会である。「大きな物語」なき後、キャラクターこそがその代理として動く政治の像がここに描かれている。
藤田直哉さんコメント "未来学者、レイ・カーツワイルの未来予測。現実に実現していること、もうすぐ実現しそうなことを元に未来予測をしているのだが、「指数級数的な進化」という概念を導入したため、その未来予測はとんでもないことになった。コンピューターの計算力が人類の知能を超えたとき、倍倍ゲームのように知能と進化が増大し、しまいには死は存在しなくなる、老化はなくなる、宇宙全体に知性が充満していく、光の速度は変わる。「人間」から出発してついには神にまで至る。あまりにも壮大な「ポストヒューマン」像に、幻惑され、魅了されてしまう一方で、どうもこれはキリスト教の思想のコンピューター時代における世俗化なのではないかとの思いも否めない。未来学者の思索は、並みのSFよりもSFである。
"
アッチェレランド
チャ−ルズ・ストロス、酒井昭伸 / 早川書房
2009/02出版
ISBN : 9784152090034
¥2,415 (税込)
第六ポンプ
パオロ・バチガルピ、中原尚哉 / 早川書房
2012/02出版
ISBN : 9784153350021
¥1,680 (税込)
藤田直哉さんコメント インフラボロボロ系SF。発電所やら下水道施設やらはボロボロ、記録もなくなる、あっても使えるような知能が残っていない。そんな未来を描く。......未来かと思いきや、福島第一原発を含む、現代日本のあちこちのインフラもボロボロ状態に。高速道路の天井は落ちる、電車はドアが閉まらなくなる。もうえらいことになっている。「成長」が止まれば、必然的にインフラ維持のコストが払えなくなり、こういう未来が到来する。さあ、どうしよう。
僕の妹は漢字が読める
かじいたかし / ホビ−ジャパン
2011/07出版
ISBN : 9784798602509
¥650 (税込)
攻殻機動隊
士郎正宗 / 講談社
2001/06出版
ISBN : 9784063344417
¥1,575 (税込)
輪るピングドラム
幾原邦彦、高橋慶 / 幻冬舎コミックス
2011/07出版
ISBN : 9784344822542
¥1,470 (税込)
輪るピングドラム
幾原邦彦、高橋慶 / 幻冬舎コミックス
2011/10出版
ISBN : 9784344823402
¥1,470 (税込)
輪るピングドラム
幾原邦彦、高橋慶 / 幻冬舎コミックス
2012/02出版
ISBN : 9784344824096
¥1,470 (税込)
ゴ−スト・オブ・ユ−トピア
樺山三英 / 早川書房
2012/06出版
ISBN : 9784152093066
¥1,785 (税込)
日本アパッチ族
小松左京 / 角川春樹事務所
2012/11出版
ISBN : 9784758436908
¥960 (税込)
藤田直哉さんコメント 失業罪により、鉄くずだらけの廃墟に投げ捨てられた男。敗戦後の日本を思わせるその焼け跡において、男は進化する。飢えと乾きにより、「鉄」を食べ、「鉄」人間になる。その集団が形成しているのが、『日本アパッチ族』である。社会から排除された人々が、特殊な進化をし、そしてユーモラスに、滑稽に、国会での挑発パフォーマンスすら行う。小松左京最初の長編にして、日本SFそのもののあり方をも象徴している重要な一作。SFには、当初から、既存の政治のあり方に対するアンチテーゼの意識が強く存在していたのだ。
小松左京セレクション
小松左京、東浩紀 / 河出書房新社
2012/03出版
ISBN : 9784309411378
¥998 (税込)
発狂した宇宙
フレドリック・ブラウン、稲葉明雄 / 早川書房
1977/01出版
ISBN : 9784150102227
¥735 (税込)
藤田直哉さんコメント 無限の平行世界が存在するのなら、パルプ雑誌のような世界が実在するのではないのか? 憧れの女性と結ばれる願望充足的な夢の世界も実在するのではないのか? そしてそこに移動できるのではないか? フレドリック・ブラウンの傑作メタフィクションSF。本邦にこの作品が紹介され、多くのSF作家に影響を与え、間接的に様々なサブカルチャーに影響を与えた。その起源のひとつは、いまなお新鮮である。
虚空の眼
フィリップ・キンドレッド・ディック、大瀧啓裕 / 東京創元社
1991/06出版
ISBN : 9784488696085
¥882 (税込)
火の鳥
手塚治虫 / 角川書店
1992/12出版
ISBN : 9784041851098
¥580 (税込)
場 所 紀伊國屋書店新宿本店 哲学フェア
会 期 2013年6月12日(水)~7月中旬
お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-5703
新宿本店 勝原